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論文記事:低出生体重児の母体要因に関する疫学研究 201401-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第61巻第1号 2014年1月

低出生体重児の母体要因に関する疫学研究

邱 冬梅(チュウドンメイ) 坂本 なほ子(サカモト ナホコ)
荒田 尚子(アラタ ナオコ) 大矢 幸弘(オオヤ ユキヒロ)

目的 日本の新生児の平均出生体重は低下する傾向にあり,低出生体重児(出生時体重が2,500g未満:LBW)の割合が増加している。本研究はLBWおよび不当軽量児(SGA)と母体要因との関連をコホート研究により検討する。

方法 2003年11月から2005年12月かけて成育コホート研究に参加協力した妊婦のうち単産の1,477組の母子を対象に,LBWとSGAにおける妊娠前からの母体要因を,多変量ロジスティック回帰分析により検討した。

結果 1,477名児の平均出生体重は2,997.7g±414.3gであり,LBWとSGAの割合はそれぞれ7.9%と6.8%であった。多変量ロジスティック回帰分析では,妊婦の身長が高いほどLBWとSGAのリスクが低かった(P<0.05)。妊娠初期に就労している妊婦のLBWのオッズ比(OR)は1.75(95%CI:1.03-2.98)であった。家計収入600万円未満に比べ,1,000万円以上のLBWのORは2.18(1.03-4.61)であり,家計収入が多いほどLBWのリスクが増大した(P<0.05)。妊娠前BMIが18.5~21.0㎏/㎡未満に比べ,やせ(BMI<18.5㎏/㎡)のLBWとSGAのORはそれぞれ2.25(95%CI:1.31-3.89)と2.08(1.29-3.35)であり,BMIが高いほどLBWとSGAのリスクが低減していた(P<0.01)。妊娠中の体重増加量が多いほどLBWとSGAのリスクが低くなり(P<0.01),妊娠中の体重増加9~12㎏未満に比べ,体重増加が7㎏未満の母親のLBWおよびSGAのORはそれぞれ2.01(95%CI:1.08-3.75)と2.23(1.29-3.88)であった。妊娠初期にストレスを感じない母親に比べ,ストレスを感じる母親のLBWとSGAのORは低かった(OR=0.42,95%CI:0.22-0.79;OR=0.55,0.32-0.96)。鉄剤内服既往がある母親のLBWおよびSGAのORも低かった(OR=0.27,95%CI:0.13-0.58;OR=0.52,0.28-0.96)。妊娠高血圧症候群(PIH)である母親のLBWおよびSGAのORは高かった(OR=7.52,95%CI:2.91-19.46;OR=4.80,2.03-11.35)。

結論 本研究では,母親の低身長,妊娠前のやせ,妊娠中の体重増加不良およびPIHがLBWおよびSGAのリスク因子であることが明らかになり,妊娠初期のストレスや鉄剤内服既往によってLBWとSGAのリスクが低減することを示した。妊娠初期の就労または家庭の経済状況が良いことはLBWのリスクを増大させていた。低出生体重児の出生を予防するには,医療関係者による妊娠中の栄養指導や健康管理だけでなく,妊婦の健康意識変容や社会的な関心と協力により女性の妊娠前の若いころからの生活習慣やライフスタイルの改善も重要である。

キーワード 出生体重,低出生体重児,不当軽量児,コホート研究,母体要因

 

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