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第60巻第6号 2013年6月 離島地域における医療・福祉サービスと島内での看取りとの関連堀越 直子(ホリコシ ナオコ) 桑原 雄樹(クワハラ ユウキ) 田口 敦子(タグチ アツコ)小澤 卓(オザワ タカシ) 永田 智子(ナガタ トモコ) 村嶋 幸代(ムラシマ サチヨ) |
目的 日本の高齢化率は23.1%であり,今後も増加傾向にあることが予想されるが,すでに離島地域の高齢化率は30%を超え,高齢社会を先取りする地域である。離島地域で暮らす高齢者の島内に住み続けたいというニーズに対し,島内での看取り体制の構築に向けた示唆を得るため,人口規模別に医療・福祉サービスの整備状況と島内での看取りとの関連について明らかにすることを目的とした。
方法 離島振興法等に指定された有人離島310島のうち,全国離島振興協議会に属する309島を管轄する137市町村を対象とし,2011年8月に郵送および電子メールを用いて,島の人口規模,医療・福祉サービスの有無,要支援・要介護認定者数,島内および島外での65歳以上の死亡者数などについて質問紙調査を実施した。また,島内看取り率(=島内での65歳以上の死亡数/対象地域に住民票を有する65歳以上の1年間の死亡数)の平均値を2群に分けて,島内の人口規模別に医療・福祉サービスの整備状況と島内看取り率の高低の関連を検討した。
結果 人口が99人以下の島(以下,少人口群),100~999人以下の島(以下,中人口群),1,000人以上の島(以下,多人口群)の島内看取り率の平均値は,それぞれ33.3%・19.5%・57.6%と多人口群で最も高かった。また,多人口群の島内看取り率高群の割合は65.4%で,少人口群38.5%・中人口群28.3%と比べ,有意に高かった(p=0.009)。さらに,多人口群のなかで,有床診療所あるいは病院(p=0.001)および介護保険施設(p=0.008)のある島は,ない島と比べ,島内看取り率高群の割合が有意に高かった。
結論 全国の離島地域の約8割が1,000人未満の島であることから,多くの離島地域に暮らす高齢者は,住み慣れた島ではなく,島外で亡くなる者が多いという実態が明らかになった。また,多人口群では,医療・福祉サービスの充実が島内看取り率に関連があった。しかし,現実的な解決策として,病院や介護保険施設などを新たに整備することは難しい。そのため,離島の特性にあった地域密着型のサービスの導入を検討していくことは重要であろう。
キーワード 医療・福祉サービス,高齢者,死亡場所,離島