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第60巻第2号 2013年2月 訪問看護ステーションにおける
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目的 本研究では,訪問看護ステーション(ST)における夜間・早朝訪問看護体制の変化を明らかにすること,および夜間・早朝の計画的訪問を実施しているSTの特徴を明らかにすることを目的として調査を行った。
方法 全国のSTに質問紙を送付し,郵送で回収した。2003年は全3,013カ所,2009年は全3,578カ所のSTを対象とした。STの属性,夜間・早朝の訪問看護の対応体制,電話対応の回数および臨時訪問回数,夜間・早朝の計画的訪問を実施していないSTにはその理由を尋ねた。分析方法は,単純集計の後,2003年と2009年の比較を行うことで6年間の夜間・早朝の訪問看護体制の推移を明らかにした。比較には,χ2検定,Fisherの直接確率検定,t検定,Mann-Whitney検定を用い,有意水準は両側5%とした。
結果 回収数は,2003年は1,891(有効回答62.8%),2009年は1,188(有効回答33.2%)であった。「2交替または3交替」の体制をとっているSTは,2003年と2009年を比較すると,0.3%から0.6%へと移行し,倍にはなったもののさほど変化がみられなかったが,夜間・早朝の計画的訪問の実績のあったSTの割合は,2003年と比べて2009年には,いずれの時間帯も増加傾向であった。計画的訪問を実施していないSTに時間帯別に「計画的訪問を実施していない理由」を尋ねたところ,2003年に比べて2009年には,「ニーズがない」がいずれの時間帯においても有意に減少し,一方で「ニーズはあるが人手が整わない」が有意に増加していた。
結論 ST利用者は,1カ所ST当たり50名程度と少ないため,小さなSTでは夜間・早朝の計画的訪問では安定的な利用者確保が難しい。よって,夜間・早朝には,複数のSTで連合体制を組めるような報酬体系や支援体制が必要である。具体的には,現在,医療保険では同一日には1カ所のSTしか報酬を請求できないことが連合体制の推進を阻んでいるため,日中と夜間とを分けて請求することを可能にする,地域ごとに夜間・早朝の訪問看護を担うべき基幹型のSTを設置する等の制度設計が急務である。さらに,ST管理者に夜間・早朝の利用者ニーズは認知されるようになってきたものの,訪問看護師不足が明らかとなった。地域全体の課題として保健所等で人材育成を行い,人材確保に取り組むことが肝要である。
キーワード 訪問看護ステーション,夜間・早朝訪問看護,全国調査,提供体制,在宅ケア