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論文記事:大学生の違法薬物への意識とライフスタイル要因との関連 201212-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第59巻第15号 2012年12月

大学生の違法薬物への意識とライフスタイル要因との関連

北田 雅子(キタダ マサコ) 武藏 学(ムサシ マナブ) 大浦 麻絵(オオウラ アサエ)
中村 永友(ナカムラ ナガトモ)

目的 本研究では,成人形成期(Emerging adulthood)と呼ばれる青年期後半の大学生を対象に,違法薬物への意識とライフスタイルとの関係を明らかにし,大学における効果的な健康教育を検討することを目的とした。

方法 札幌市内の総合大学の学部生1~4年生3,970名を対象に自記式質問紙での調査を行った。大麻などの違法薬物へ何らかの効用を認めている群を「肯定群」,そうでない者を「非肯定群」とした。学生を取り巻く環境(薬物入手の可能性,周囲の乱用者の有無),ライフスタイル,タバコへの心理・社会的依存度(加濃式社会的ニコチン依存度調査票:KTSND)について回答を求めた。

結果 3,579名の大学生から回答が得られた(男子2,569名:71.8%,女子1,010名:28.2%)。ライフスタイルを学年間で比較すると,不健康なライフスタイルを持つ者の割合は,1年生に比べて2年生以上の学年で高かった。特に,喫煙率や飲酒率は,男女とも学年を経るごとに増加する傾向を示した。違法薬物への肯定群は362名(10%),非肯定群は3,194名(90%)であった。ライフスタイルを群間で比較した結果,肯定群では食事バランスへの関心が低く,野菜や果物の摂取頻度が低く,飲酒・喫煙する者の割合が有意に高かった。タバコへの心理・社会的依存度についてKTSNDの合計得点を比較すると,肯定群では18.9(±6.8)点,非肯定群では15.1(±7.0)点であり,肯定群の方が有意に高値を示した。さらに,肯定群では「薬物の入手が可能」「周りに乱用者がいる」という回答者の割合も非肯定群に比して有意に高かった。

結論 薬物乱用防止教育を積極的に実施する時期としては,ライフスタイルが著しく変化する入学後から2年生へ移行する時期が特に重要であることが示唆された。違法薬物を肯定的にみなす群は,不健康なライフスタイルを持つ者が多く,喫煙を文化的な嗜好品として容認する意識を持つ者の割合が高かった。ゆえに,大学における薬物乱用防止教育の普及啓発内容としては,健康的なライフスタイルの推奨とともに,喫煙・飲酒を含め,違法薬物を肯定的に容認する認知の是正を目的としたアプローチが重要であると考えられた。

キーワード 大学生,薬物乱用防止教育,ライフスタイル,喫煙,心理社会的依存

 

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