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論文記事:全国保健所の精神障害者デイケアサービスの実施状況の推移と影響要因 201112-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第58巻第15号 2011年12月

全国保健所の精神障害者デイケアサービスの
実施状況の推移と影響要因

佐伯 圭吾(サエキ ケイゴ) 山田 全啓(ヤマダ マサヒロ) 山下 典子(ヤマシタ ノリコ)
有埜 みや子(アリノ ミヤコ) 角野 文彦(カクノ フミヒコ) 植村 直子(ウエムラ ナオコ)
畑下 博世(ハタシタ ヒロヨ) 車谷 典男(クルマタニ ノリオ) 

目的 わが国の保健所は精神障害者デイケア提供に先駆的かつ重要な役割を担ってきたが,1999年の精神保健福祉法改正,2005年の障害者自立支援法施行によって,障害者福祉を主に担当する行政機関は都道府県から市町村に移行された。これらの法整備は保健所デイケアのあり様に影響を及ぼしていると考えられるが,その状況は明らかでない。そこで,精神障害者を対象とした保健所デイケアの実施状況の推移と,調査時現在のデイケア実施の有無にかかわる要因の検討を目的として本研究を実施した。

方法 全国517保健所(調査時現在)の精神保健福祉担当者宛てに,自記式調査票を2008年10月から2009年1月にかけて郵送にて配布し,回収した。調査票では,管内人口,保健所デイケアの過去からの実施状況,デイケアを終了した保健所にはその理由,管内の精神科医療機関数や精神保健福祉施設数などについての回答を求めた。

結果 411保健所(79.5%)から回答が得られた。県型保健所でのデイケアの実施割合は1975年から増加し,1997年と1998年にピーク(91.5%)を形成した後,2002年以降は急速に減少し,調査時(2008年)には23.7%にまで低下していた。これに対し,市区型保健所の減少はなだらかで,その結果,調査時現在のデイケア実施割合は県型保健所が,政令指定都市型の50.0%,中核市型の71.4%,特別区保健所の81.3%に比べ有意に低率であった(P<0.01)。調査時現在のデイケア実施の有無を目的変数,保健所区分,管内の精神科医療機関数,精神福祉施設数,デイケア実施施設数などを説明変数とした多重ロジスティック回帰分析では,保健所区分のみが有意な関連を示した。また,県型保健所のうちデイケアを「実施している」保健所と「実施していない」保健所との比較では,前者に比べて後者の管内人口10万人当たりの精神福祉施設数が有意に多かった(P<0.01)。

結論 県型保健所における精神障害者のためのデイケアサービスの実施割合は大きく減少し,その減少には,精神保健福祉法改正や障害者自立支援法施行により精神障害者福祉の窓口となる行政機関が保健所から市町村へ変化したことや,地域の精神福祉資源数が関与していたことが示唆された。

キーワード 保健所,精神障害者デイケア,精神保健福祉法,障害者自立支援法

 

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