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第61巻第11号 2014年9月 がん検診の受診行動規定要因に関する検討大原 賢了(オオハラ ケンリョウ) 佐伯 圭吾(サエキ ケイゴ) 根津 智子(ネヅ サトコ)大林 賢史(オオバヤシ ケンジ) 冨岡 公子(トミオカ キミコ) 岡本 希(オカモト ノゾミ) 車谷 典男(クルマタニ ノリオ) |
目的 がん検診の受診行動に影響する要因を明らかにし,受診率向上のための効果的な対策のあり方を検討することを目的とした。
方法 2012年9月に奈良県が実施した「平成24年度なら健康長寿基礎調査」の個票データを分析に用いた。胃,大腸,肺のがん検診の過去1年間の受診の有無について回答した3,226人,子宮がん検診については2,462人,乳がん検診については1,791人をそれぞれ対象とし,各がん検診受診の有無と,調査票で把握された各種説明変数との関連を,多重ロジスティック回帰分析により検討した。
結果 がん検診受診につながりにくい有意な要因は,がん検診の種類で調整オッズ比にばらつきがあったものの,ほぼ共通して,職業が会社員・公務員に対してそれ以外であること(特に自営業・農林水産業(調整オッズ比 大腸がん2.08~乳がん3.69)),がんに対する心配度が「たいへん心配である」に対して「全く心配していない」こと(肺がん3.30~乳がん6.74),健康づくりに取り組んで「いる」に対して「いない」こと(胃がん1.46~大腸がん1.62),非喫煙に対して現在喫煙していること(肺がん1.39~乳がん2.59),医科医療機関に通院「している」に対して「していない」こと(大腸がん1.19~胃がん1.46),地域や組織での活動に参加「している」に対して「していない」こと(肺がん1.25~胃がん1.40)であった。一方,現在の健康状態,健康上の問題での日常生活への影響,過去の大きな病気やケガの経験は,がん検診受診につながりにくい要因とはいえなかった。
結論 がん検診の受診率向上のためには,特に職業の違いによる受診格差が大きいことから,個人にがん検診受診を促す取り組みだけでは不十分であり,対象者が参加しやすいがん検診の実施が不可欠である。また,地域や組織活動への参加者を増やすための取り組みを一層工夫する必要があると考える。
キーワード がん検診,受診率,職業,健康づくり,ソーシャルキャピタル