情報提供
第54巻第6号 2007年6月 健康危機管理事件発生時のリスクコミュニケーションにおける
今村 知明(イマムラ トモアキ) 下田 智久(シモダ トモヒサ) 小田 清一(オダ セイイチ) |
目的 過去の食品災禍事件における公的情報提供(文字情報)と報道内容の間に発生した情報格差を把握するとともに,その発生原因を分析することで,良好なリスクコミュニケーションの実施に資する。
方法 O157事件,BSE事件において,関係行政機関が提供した文字情報と国内主要紙の報道内容を比較し,格差の有無の確認,発生状況を把握・分析し,この原因について考察した。
結果 O157事件では,厚生省(当時)が中間報告したO157の感染源に関する調査結果について報告書の中で感染源の特定を否定したが,報道の中には「感染源が特定した」との印象を与えるものもあった。BSE事件では,スクリーニング検査陽性(確定検査では陰性)の検体の発生に関する情報提供について,「偽陽性」と「疑陽性」を混同した報道も散見された。
結論 公的情報提供と報道内容の格差は,「事実の捉え方の相違」や「報道機関の表現方法の選択」により発生するものと推測される。これらに起因する情報格差の発生を抑止するためには,関係行政機関が報道関係者と日頃からコミュニケーションを図るとともに,正確な情報伝達や発信情報の一元化を行うための体制の確立が必要である。
キーワード 大規模健康被害,健康危機管理,リスクコミュニケーション,報道