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論文記事:高齢者における「世代間のふれ合いにともなう感情尺度」作成の試み 201411-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第61巻第13号 2014年11月

高齢者における「世代間のふれ合いにともなう感情尺度」作成の試み

-高齢者の心身の健康との関連-
村山 陽(ムラヤマ ヨウ) 高橋 知也(タカハシ トモヤ) 村山 幸子(ムラヤマ サチコ)
二宮 知康(ニノミヤ トモヤス) 竹内 瑠美(タケウチ ルミ) 鈴木 宏幸(スズキ ヒロユキ)
野中 久美子(ノナカ クミコ) 深谷 太郎(フカヤ タロウ) 谷口 優(タニグチ ユウ)
西 真理子(ニシ マリコ) 新開 省二(シンカイ ショウジ) 藤原 佳典(フジワラ ヨシノリ)

目的 高齢化を背景に「世代間交流」に対する社会的関心が高まる中で,子どもとのふれ合いが高齢者の健康に及ぼす効果の機序の解明が求められており,そのためには行動の背後にある高齢者の心の動きを検討することが重要であると考えられる。そこで,本研究では子どもとのふれ合いにより生じる高齢者の感情状態を明らかにするとともに,それを測定する「世代間のふれ合いにともなう感情尺度」(以下,世代間ふれ合い感情尺度)を作成し,子どもとのふれ合いによる感情と高齢者の心身の健康との関連を検討することを目的とした。

方法 65歳以上の高齢者47名に行った半構造化インタビュー調査を元に15項目からなる「世代間ふれ合い感情尺度」案を作成し,群馬県A町在住の65歳以上の高齢者を対象に質問紙調査を実施した。調査協力者291名の中で,日常的に子どもとのふれ合いがある高齢者204名(男性84名,女性120名)を分析対象者とした。因子分析により「世代間ふれ合い感情尺度」の下位尺度を構成し,α係数を算出して信頼性を検討した。また,尺度の構造的検討を行うために確証的因子分析を行い,因子モデルの適合度の比較を行った。さらに,開発された尺度と個人属性および健康関連の変数間との得点差から妥当性を検討した。

結果 「世代間ふれ合い感情尺度」は,因子分析の結果から「被承認感」「高揚感」「自己充足感」の3つの下位尺度から構成された。各下位尺度のα係数は0.68~0.78であり,3因子構造が示された。各下位尺度得点において,子どもとのふれ合い志向が低い者よりも高い者の方が高いことが示された。また,子どもとふれ合う頻度が少ない者よりも多い者,心臓病の既往がある者より既往のない者の方が「被承認感」「高揚感」が高いことが認められた。さらに孫と同居していない者より同居している者は「高揚感」,外出頻度が少ない者より外出頻度が多い者の方が「被承認感」がそれぞれ高いことが示された。

結論 高齢者は子どもとのふれ合いを通して,ポジティブな感情を抱きやすく,それが高齢者の子どもとふれ合いたいという欲求や行動および心身の健康に影響する可能性が示唆された。今後,「世代間ふれ合い感情尺度」を用いて知見を蓄積していく中で,子どもとの交流が高齢者の心身の健康に及ぼす効果の機序を明らかにしていくことが期待される。

キーワード 世代間のふれ合いにともなう感情,世代間交流,高齢者,ポジティブ感情,心身の健康

論文