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論文記事:未就学児を持つ共働き夫婦におけるワーク・ライフ・バランスと精神的健康 201212-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第59巻第15号 2012年12月

未就学児を持つ共働き夫婦における
ワーク・ライフ・バランスと精神的健康

-1年間の縦断データから-
島田 恭子(シマダ キョウコ) 島津 明人(シマズ アキヒト) 川上 憲人(カワカミ ノリト)

目的 従来のワーク・ライフ・バランス(以下,WLB)と精神的健康に関する研究では横断研究が多く要因間の因果関係を特定できない限界があった。また「仕事と家庭役割間のネガティブなスピルオーバー」が主に注目され「両役割間のポジティブなスピルオーバー」を考慮した研究は少ない。本研究は,両役割間のネガティブおよびポジティブなスピルオーバーが心理的ストレス反応に与える影響を,縦断データを用いて検討することを目的とした。

方法 ベースライン調査(T1:2008年11月)は都内某区の保育園に子どもを通わせる共働き夫婦を対象に実施され2,992名が回答した。フォローアップ調査(T2:2010年1月)は,T1調査時にT2調査への参加に同意した1,466名を対象に実施され,963名が回答した(追跡率65.7%)。本研究では,両調査での有効回答者894名(男性394名,女性500名)を分析対象とした。解析は,心理的ストレス反応(T2)を従属変数とし,以下のステップで独立変数を追加投入する階層的重回帰分析を男女別に行った。ステップ1:基本属性(T1),ステップ2:心理的ストレス反応(T1),ステップ3:仕事領域変数(T1:量的負担,裁量権,サポート),ステップ4:家庭領域変数(T1:量的負担,裁量権,サポート),ステップ5:WLB変数(T1:仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバー,家庭から仕事へのネガティブ・スピルオーバー,仕事から家庭へのポジティブ・スピルオーバー,家庭から仕事へのポジティブ・スピルオーバー)

結果 男性ではステップ5で,仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバー(T1)が,心理的ストレス反応(T2)と正の関連を示していた。女性では家庭での量的負担(T1)が正の関連を,家庭での裁量権(T1)が負の関連を示していた。ポジティブ・スピルオーバーは,男女ともに心理的ストレス反応(T2)と有意な関連を示さなかった。

結論 男性では仕事から家庭へのネガティブなスピルオーバーが1年後の心理的ストレス反応の高さに関連している一方,女性では家庭の量的負担と裁量権が1年後の心理的ストレス反応に関連していた。わが国の共働き夫婦の精神的健康を考える際,男性では仕事から家庭へのネガティブなスピルオーバーに,女性では家庭での負担の低減と裁量権を上げることの重要性が示唆された。本研究ではポジティブ・スピルオーバーは,男女ともに1年後の心理的ストレス反応と有意な関連を示さなかったが,さらに他の健康アウトカムとの関連を含め研究が行われるべきである。

キーワード 共働き世帯,ワーク・ライフ・バランス(WLB),ネガティブ・スピルオーバー,ポジティブ・スピルオーバー,役割間葛藤,精神的健康

 

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