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第58巻第3号 2011年3月 都道府県別の肥満者割合と社会経済格差について長谷川 卓志(ハセガワ タカシ) |
目的 肥満者の割合はわが国のみならず世界各国でも上昇を続けており,健康問題としてその実態解明と対策には多くの研究と実践が進んでいる。肥満は,生物学的にはカロリーの過剰摂取,運動量の低下などがその要因に挙げられており,多くの研究ではそれらの対策に焦点が当てられてきた。しかしながら,疾病を取り巻く各種の社会経済状態,特に格差について,海外では研究テーマとして盛んに取り上げられているものの,わが国における研究,報告は少ない。本研究では47都道府県の資料をもとに,地域の肥満者割合が,社会経済状態を示す各指標によりいかに説明されるものか検討したものである。
方法 都道府県の肥満者の割合を従属変数,ジニ係数,高等学校卒業者の大学等進学率,1人当たり県民所得,老年人口割合,65歳平均余命,完全失業率,1日の歩数,保有自家用車数を独立変数として分析,重回帰分析(変数増減法)を行った。
結果 重回帰分析の結果,男性では完全失業率(β,0.561,p<0.001),保有自家用車数(β,0.350,p<0.001),女性では大学等進学率(β,-0.507,p<0.001),ジニ係数(β,0.310,p<0.01),保有自家用車数(β,0.243,p<0.05)などが有意な関連を認めた。
結論 都道府県の肥満者割合とその地域差を規定する因子として経済格差,学歴格差が重要な役割を演じている可能性を示唆する結果であった。肥満を格差とその社会環境からとらえることが,予防対策を推進させるにあたりますます重要となるであろう。
キーワード 体格指数,肥満者割合,経済格差,学歴格差,ジニ係数