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論文記事:社会的ネットワークが高齢者の生命予後に及す影響 200209-3 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第49巻第10号 2002年9月

社会的ネットワークが高齢者の生命予後に及す影響

岡戸 順一(オカド ジュンイチ) 星 旦二(ホシ タンジ)

目的 本研究の目的は,社会的ネットワークに関する代表的指標がわが国高齢者のさ生命予後に対して有する効果を検討し,生命予後の規定要因としての社会的ネットワークに対する評価を深めることにある。
方法 調査方法は,全国11市町村に居住する入院中および施設入所者を除く在宅高齢者27,472人を対象とした基礎調査と2年後の生存状況に関する追跡調査からなり,初回調査時に回答の得られた21,716人(回収率79.0%)から,基本属性が不明の者を除いた19,636人を分析対象としている。本論では,生命予後の規定要因と仮定した社会的ネヴトワークに関する指標として1)配偶者同居,2)社会活動,3)手段的支援,4)情緒的支援を選定している。なお,社会活動は友人や近所の方とのおつきあい,旅行,行楽,地域,奉仕活動の3変数を加算した尺度によって測定した。
結果 社会的ネットワークに関する指標群と生命予後との関連を検討した結果,手段的支援以外の各指標に否定的な回答をした者,すなわち配偶者と同居していない者,社会活動Jのレベルが低い者,情緒的支援者のいない者に死亡人数の有意な偏りが認められた。さらに性別,年齢階級,治療中の疾病数,老研式活動能力による手段的自立度を共変量としたCox比例ハザードモデルを用いて,調査期間内の生命予後(死亡)に対する効果を検討した結果,祉会活動のレベルが高い者と比較して低い者のハザードは1.55(95%信頼区間1.07-2.25)と統計上有意であった。一方,配偶者同居,手段的支援,情緒的支援の効果は有意ではなかった。
結論 社会活動は,性別,年齢階級,治療中の疾病数,手段的自立度の影響を調整した後でも,生命予後に対する効果が有意であり,高齢者の生命予後を規定する要因と考えられた。また,配偶者同居および情緒的支援と生命予後との関連は間接的なものであり,社会活動を経由したものか,交絡要因の影響が両指標をそれぞれ経由したものと推測された。一方,手段的支援には生命予後との関連が認められず,健康の悪化により結果的に手段的支援が強化されている事例の存在が推測された。本結果は社会活動の生命予後の延長効果に関する情報提供として,今後の実効的な保健計両策定の一助になる可能性が示唆された。
キーワード 配偶者同居,社会活動,手段的支援,情緒的支緩,高齢者,生命予後

 

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