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第60巻第8号 2013年8月 23価肺炎球菌ワクチンの再接種およびインフルエンザワクチン
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目的 2009年10月に23価肺炎球菌ワクチン(以下,23-PPV)の再接種(以下,再接種)およびインフルエンザワクチンを含む他の不活化ワクチンとの同時接種(以下,同時接種)が承認された。本研究は,診療所における再接種および同時接種の承認に対する医師の認知状況,同時接種または再接種に対する医師の態度とその理由,接種の実施状況や自治体の23-PPV接種に対する助成の有無がこれらの項目とどのように関連するかを明らかにすることを目的とした。
方法 2010年8月までに23-PPV接種に対する公費助成を実施した374自治体にある14,953の内科を標ぼうする診療所(以下,助成あり群)と公費助成を行っていない1,376自治体にある50,421の内科を標ぼうする診療所(以下,助成なし群)から,それぞれ2,000の診療所を単純無作為法で抽出した。2011年2~4月にこれら計4,000の診療所に郵送法によるアンケート調査を実施した。診療所を代表する医師1名にアンケートの回答を求めた。
結果 回収率は34.0%であった。同時接種の承認に対する認知割合は,助成あり群が47.6%,助成なし群が41.8%であり,両群間に有意な差は認められなかった。一方,再接種の承認に対する認知では前者が77.6%,後者が70.8%であり,有意な差が認められた。2010年10月~2011年1月の期間中の23-PPVの接種,再接種および同時接種の実施状況は,助成あり群でそれぞれ84.8%,39.0%,11.3%であり,助成なし群では74.2%,31.2%,5.8%であった。いずれの接種においても助成あり群で有意に高かった.再接種または同時接種をすすめない理由については,「副反応」と「自治体による助成がないこと」が上位にあげられた。
結論 自治体の23-PPVの助成の有無にかかわらず再接種の承認に対する認知割合が同時接種のそれより高かった理由として,再接種に対する要望や調査報告などが頻繁に学術誌,各種医学会またはマスコミなどに取り上げられたことが考えられる。「再接種の承認に対する認知の有無」と「23-PPV接種に対する助成の有無」の間に有意な関連が認められたことから,再接種に関する情報は助成あり自治体の医師の間でより認知されていることが示された。23-PPVの接種実施状況,同時接種/再接種の実施状況などは,それぞれ「23-PPV接種に対する助成の有無」と有意な関連が認められた。これらの結果から23-PPV接種または同時接種の接種実施割合を向上させるためには,自治体の23-PPVの接種費用に対する助成が重要であることが示された。
キーワード 23価肺炎球菌ワクチン,インフルエンザワクチン,再接種,同時接種,自治体,助成