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第59巻第5号 2012年5月 家族構成の変動と家族関係が子ども虐待へ与える影響-母親の家族内における立場に注目して-中澤 香織(ナカザワ カオリ) |
目的 子どもの虐待は,経済的困窮をはじめ親や子どもの障害や疾病,家族の関係など様々な困難が複合的に重なり合う問題であり,介入と防止の取り組みには家族の状況と背景にある社会を捉える視点が必要である。本研究は,家族構成の変動と家族構成員間の関係が子ども虐待へ与える影響を考察するため,家族類型による虐待の様相を捉えることを目的とする。
方法 調査は平成15年度に北海道内すべての児童相談所において受理された虐待相談件数のうち,5歳,10歳,14・15歳の129例を対象とし,各児童相談所を訪問した研究班メンバーが児童票から必要事項を転記するという方法で行い,個人情報保護が可能な形に整理できた119例を分析した。
結果 家族類型による虐待種別・虐待者の違いに家族の関係が表れていた。ステップファミリーでは継父による身体的虐待(45.8%)と性的虐待(20.8%)が多かった。実父母家族では実父による身体的虐待(21.2%)と実母によるネグレクト(33.3%)が多かった。母子家族では実母によるネグレクト(59.2%)が多かった。家族類型ごとの虐待の特徴には,母親の家族内における立場の違い,継父母と継子の関係形成の困難さ,夫婦関係における不均衡な力関係などの影響がみられた。
結論 虐待など家族内で生起する問題に関して家族の機能の低下が指摘されるが,家族構成員相互の関係に注目する必要がある。虐待がそれぞれの家族にある不均衡な力関係の下に起きていることを捉えていくことが介入と支援に不可欠である。
キーワード 子ども虐待,家族構成員の力関係,母親,社会経済的問題