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第61巻第4号 2014年4月 滋賀県野洲市における特定健診未受診理由を踏まえた
宮川 尚子(ミヤガワ ナオコ) 門田 文(カドタ アヤ) 清水 めぐみ(シミズ メグミ) |
目的 平成20年度より開始された特定健診の平均受診率は市町村国保で31%前後であり,参酌標準の65%と大きく乖離している。健診受診率に影響を及ぼす要因について,受診勧奨施策の受診率への効果を検討した報告は少ない。本研究では,滋賀県野洲市において特定健診未受診者の未受診理由を明らかにし,得られた未受診理由を踏まえた健診受診勧奨手法を開発して,その効果について検討した。
方法 滋賀県野洲市の国保加入者を対象として,平成21年度に,前年度(平成20年度)の特定健診未受診者4,122人のうち無作為抽出した1,579人に郵送にて特定健診未受診の理由を尋ねる質問紙調査を実施し,760人(48.1%)から回答を得た。特定健診未受診理由に基づき,未受診理由を踏まえた受診勧奨手法を開発し,平成22年度に受診率向上のための対策を実施した。勧奨手法の効果は,健診実施期間が平成22年度と同じであった平成20年度の健診受診率との比較により評価した。
結果 健診未受診理由調査の結果,年齢層に関わらず「病院などにかかっている」「事業所健診等を受けている」「たまたま受け忘れた」「健康だから」が多く,中壮年層では加えて「受ける時間がない」も多かった。これらの未受診理由を踏まえて,個人と集団,それぞれへのアプローチを組み合わせた受診勧奨手法を開発した。個人へのアプローチとしては健診開始時に受診券と一緒に受診勧奨チラシを対象者全員に個別送付し,また健診期間の中間時点に,その時点の未受診者全員に再度,受診勧奨チラシと健診実施機関一覧表を個別送付した。集団に対するアプローチとしては同じく健診期間の中間時点で,「健康で自覚症状のない時の受診の重要性」をテーマにした記事の広報掲載とポスターの掲示を行った。この受診勧奨手法を用いた平成22年度の特定健診受診率は,用いていない平成20年度に比べて7.2%有意に上昇し,これは年齢層に分けても同様の結果であった。受診のきっかけを調査したところ,今回の受診勧奨手法をあげた者の割合は,ほぼ受診率の増加分に相当する660人(受診率8%相当)であった。
結語 特定健診未受診理由を踏まえた受診勧奨手法を開発し,その効果を評価した。タイミングを見計らった個別通知や,健診受診の意義を伝える勧奨を,集団および個人を対象に実施したことにより,高年層,中壮年層ともに健診受診率は大きく上昇し,本受診勧奨手法の有用性が示された。
キーワード 特定健康診査,受診率,受診勧奨,未受診理由,市町村国保