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論文記事:子どもの心の診療拠点病院機構推進事業にかかる人的費用推計 201307-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第60巻第7号 2013年7月

子どもの心の診療拠点病院機構推進事業に
かかる人的費用推計

植田 紀美子 (ウエダ キミコ) 奥山 眞紀子(オクヤマ マキコ)

目的 子どもの心の診療システムの整備を目的とした「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業(以下,拠点病院事業)」が,平成20年度からの3年間実施された。今後,子どもの心の診療が推進されていくためには,拠点病院事業の実態を把握し,それに伴う人的費用を明らかにすることが重要である。本研究の目的は,分析の立場を事業提供者側として,拠点病院事業の実施状況と人的費用を記述し,部分的経済的評価を行うことである。

方法 平成23年11月,11自治体18カ所の拠点病院に対して電子メールで記名式自記式質問票による調査を実施した。調査内容は,拠点病院の基本情報,子どもの心の診療従事者,拠点病院事業の基本情報および事業従事者の内訳などである。本稿では,事業の実態を明らかにし,事業最終年度の事業内容別職種別の年間人的費用を解析した。

結果 10自治体14病院から回答があった。拠点病院間で,診療報酬上の病院の機能が異なっていた。この相違が診療報酬の相違として大きかった。医師数の多い病院ほど,診療支援や医師への初期研修や後期研修,コメディカルへの実施研修などの専門的かつ継続的な研修事業を実施していた。拠点病院事業のほとんどすべての事業項目で医師が関与していた。 子どもの心の診療医は,小児領域での他の診療分野や大人の精神科領域に従事する医師とは異なり,診療業務に加えて,調整業務,連携業務等が要求されていた。出張医学的支援・巡回相談は,医師数の多い拠点病院のみ行っており,1人1回当たりの時間が比較的長く人的費用も高かった。診療支援にかかる人的費用は普及啓発や研修事業にかかる人的費用よりもそれぞれ5倍,2倍と極めて高く,約570万円であった。本調査により,拠点病院事業の必要経費である人的費用が総額約955万円と推計できた。

結論 子どもの心の診療の需要ニーズは年々増加する一方,専門医や対応可能な医療機関の不足等のため,政策医療としての対応が望まれる。今後,子どもの心の診療が充足されるためには,拠点病院事業の後継事業である「子どもの心の診療ネットワーク事業」が全国規模で推進される必要がある。中でも出張医学的支援・巡回相談は効果的な連携強化,タイムリーな介入が期待できるものであるからこそ,費用面の対策も必要である。また,子どもの心の診療に関わる専門職の育成は,全国的に事業展開される前提条件となる重要課題である。

キーワード 子どもの心の診療拠点病院機構推進事業,人的費用,部分的経済的評価,子どもの心の診療医,ネットワーク

 

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