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第59巻第4号 2012年4月 都市部在住高齢者における社会活動参加者の特性-介護予防の推進に向けた基礎資料-佐藤 むつみ(サトウ ムツミ) 大渕 修一(オオブチ シュウイチ) 河合 恒(カワイ ヒサシ)新井 武志(アライ タケシ) 小島 成実(コジマ ナルミ) |
目的 本研究では,高齢者の社会活動参加者に対して介護予防を推進するための基礎資料を得ることを目的として,都市部在住高齢者における社会活動参加者の活動の種類別特性を検討した。
方法 東京都A区において,65歳以上の高齢者の約10%にあたる3,500名を,性,居住地区別に層化のうえ無作為に抽出し,社会活動参加の状況,基本属性,介護予防に関する知識,健康に対する意識,心身の健康状態などについて,調査用紙を郵送して回答を求めた。有効回答票1,886件(53.9%)のうち,要支援・要介護者を除く1,485件(有効回答票の78.7%)を分析対象とした。社会活動参加の状況は,①町内会,自治会,②老人会,老人クラブ,③趣味・スポーツ・学習サークル,自主グループなどの参加の有無を尋ねた。①と②を地域社会活動,③を個人社会活動とし,それぞれの参加群と不参加群の特性をクロス集計にて検討した。さらに,参加の有無を従属変数,クロス集計にて統計学的に有意な関連が認められた項目を独立変数とした多重ロジスティック解析を行い,オッズ比を検討した。
結果 地域社会活動参加群は99名,個人社会活動参加群は459名であった。地域社会活動参加群は不参加群と比較して,男性,高卒以下,高齢者のみ世帯ではない,地域包括支援センターを知っているなどの割合が高かった。個人社会活動参加群では,女性,専門・短大・大卒以上,高齢者のみ世帯,暮らし向きがふつう・余裕がある,介護予防を知っている,二次予防事業対象非該当,体の衰えを予防できる自信がある,主観的健康感が健康,移動能力が高い,外出頻度が高い,孤立感がないなどの割合が高かった。多重ロジスティック解析の結果,地域社会活動の参加と独立した関連が認められた要因は,男性,高卒以下,高齢者のみ世帯ではない,地域包括支援センターを知っている,の4項目であった。一方,個人社会活動の参加では,女性,専門学校・短大・大卒以上,高齢者のみ世帯,暮らし向きがふつう・余裕がある,主観的健康感が健康,移動能力が高い,外出頻度が高い,の7項目であった。
結論 地域社会活動と個人社会活動では参加者の特性が全く違うことがわかった。介護予防の推進のためには,社会活動の種類に応じた介入方法を検討していく必要があることが示唆された。
キーワード 地域住民調査,社会活動,介護予防,地域高齢者,都市部