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第60巻第1号 2013年1月 ICD改訂の動向について谷 伸悦(タニ ノブヨシ) 及川 恵美子(オイカワ エミコ) |
ICD改訂に係る動向を適切に理解していただくために,まず, ICDに関する基礎的な概念,組織,現状等について述べ,続いて ICDの改訂についてお話しいたします。
Ⅰ は じ め に
ICDとは,世界保健機関:WHO( World Health Organization )で定められている「疾病及び関連保健問題の国際統計分類:( International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems )」の略称であり,通称,「 ICD=国際疾病分類」と呼ばれている。 ICDはこれまで何度も改訂が行われてきており,現在,日本ではこの ICDの第10回改訂( Tenth Revision)の2003 年度版に基づいたものが,「統計法第28 条第1項及び附則第3条の規定に基づく疾病,傷害および死因統計分類」(平成 21年3月23日総務省告示 176号)(以下,ICD-10 )として総務省より告示され,人口動態や医療分野等における公的な統計等に使用されている。
Ⅱ ICDの基本
(1) 「ICD-10」の構成
「ICD-10」は,基本分類(約14,000 項目),疾病分類(大分類,中分類,小分類),死因分類により構成されており,その構成要素の数は,基本分類>小分類>中分類>死因分類>大分類 の順番となっている。大分類と死因分類はおおむね似通ってはいるが完全に同一とはなっていない。
日本において告示されている統計分類表としては,「疾病,傷害及び死因統計分類基本分類表」「疾病分類表」(大分類・中分類・小分類),「死因分類表」の3つの分類表があり,いろいろな分野での統計,調査等において,その分類表を基にしたものが使い分けられている。
(2) 「ICD-10」の活用例
例えば,人口動態統計では「死因分類(死因簡単分類)」「基本分類(人口動態死因統計分類基本分類表)」「選択死因分類表」「乳児死因簡単分類表」「感染症分類表」が使用されており,患者調査では「疾病分類(大分類,中分類,小分類)」が使用されている。また,社会医療行為別調査では「疾病分類(中分類)」が,国民健康保険等における診断群分類包括評価に用いられる標準病名等には「基本分類」が用いられており,さらに国民健康保険等に関連する電子カルテや電子レセプト等にも「基本分類」が活用されている。
(3) 「ICD-10」の分類
ICD の分類は病名をアルファベットと数字を用いたコードで表記しており,各国においてその疾患の名称が異なっても同一のコードとなるように構成されている。