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論文記事:大学生の家族形成意欲と関連要因に関する調査研究 201405-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第61巻第5号 2014年5月

大学生の家族形成意欲と関連要因に関する調査研究

-男女共同参画社会に向けた若者への支援について-
齋藤 幸子(サイトウ サチコ) 星山 佳治(ホシヤマ ヨシハル) 内山 絢子(ウチヤマ アヤコ)
近藤 洋子(コンドウ ヨウコ) 原 美津子(ハラ ミツコ) 宮原 忍(ミヤハラ シノブ)

目的 少子化問題研究の一環として,大学生を対象に青年の結婚の意思を規定する因子を調べることを目的とし,恋愛観,性役割観,価値観などを調査,次世代の家族形成支援の一助となる資料を得ようとした。

方法 首都圏の大学3カ所において,男女大学生を対象に集合調査法によるアンケートを実施し,有効回答252件を分析した。調査内容は,結婚の意思,子どもが欲しいか(以下,出産意欲),恋愛観,性役割観などで,性別のほか,結婚の意思の有無により2群に分けて検討した。さらに,結婚の意思を規定する因子を探るため,男女別に多重ロジステイックモデル分析を行った。

結果 将来の結婚の意思は,「する」61%,「しない」2%,「わからない」33%,無回答4%であった。結婚の意思がないまたは未定の群でも,69%に出産意欲があった。男女のつき合い方や,生き方に関わる価値観で性差が認められ,デート・バイオレンスにつながるような行為の許容度や,「子どもを保育所に預けるのはかわいそう」など従来型の価値観を支持する割合は,男性の方が高かった。結婚の意思の有無別分析では,結婚群の性役割を支持する割合が高かった。性役割に関しては,男女共同参画社会の実現に賛成しながら,家庭内の固定的性役割分担にも賛成するという,女性に対するダブルバインドの価値観をもつ者の存在が認められた。結婚の意思についての多重ロジステイックモデル分析では,男女で異なる因子が見いだされたが,カップル形成に関わるという意味では共通する側面があった。女性では「カップル形成の見通しに関する肯定感」が強い因子であった。

結論 結婚の意思が未定でもそのうちの7割に出産意欲があることから,子どもをもつことの価値の高まりが,家族形成意欲を促すものと考えられた。価値観や結婚の意思を規定する因子は男女で異なっており,若者への家族形成支援においては,男女それぞれの価値観とカップルの関係性に注目することの必要性が示唆された。性別役割分担を支持する群の方が,将来結婚する可能性が高かったことについては,裏を返せば,男女平等を支持する群は,現在の結婚のあり方を支持できず回避する傾向があるということである。わが国が男女共同参画社会の実現をもって少子化問題を乗り越えようとするのであれば,多様な家族のあり方を認めるなど,男女平等を支持する者が家族形成を望むような社会環境を用意することが必須である。

キーワード 少子化,結婚,出産,家族形成,性役割観

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