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論文記事:1998年以降の自殺死亡急増の地理的特徴 200309-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第50巻第10号 2003年9月

1998年以降の自殺死亡急増の地理的特徴

藤田 利治(フジタ トシハル) 谷畑 健生(タニハタ タケオ) 三浦宜彦(ミウラ ヨシヒコ)

目的 自殺予防に向けて,1989年から1995年までの7年間と比較し,3万人を超える自殺死亡数が観察されている1998年から2000年までの3年間の自殺死亡急増にかかわる地域集積性について明らかにする。
方法 人口動態調査死亡票の情報を用いて,1989~1995年と1998~2000年との自殺死亡の発生状況について比較した。第1に,年齢階級別自殺死亡率を男女別に算出して,1998~2000年での自殺死亡急増の性・年齢階級別の特徴を整理した。第2に,都道府県間の自殺死亡増加の違いについて,両期間の粗自殺死亡率の差と比を用いて都道府県ごとの自殺死亡増加の状況を検討した。第3に,二次医療圈別の自殺死亡増加の違いを,粗自殺死亡率と年齢階級別自殺死亡率のベイズ推定値を用いて分析し,あわせて二次医療圈レベルの自殺死亡についての地図を作成した。
結果 年平均の自殺死亡数は、1989~1995年の20,556人から1998~2000年の30,849人へと1万人を超える急増がみられているが,その4分の3以上に相当する増加が15歳から69歳までの男において発生していた。特に45歳から69歳までの男での自殺死亡数の増加は,全増加の62%に相当する大きさであった。男での自殺死亡率の上昇は,従来から高率であった東北地域を含む日本海側および九州地域でも起きていたが,これまでやや自殺死亡率が低い傾向にあった関西および関東などの大都市部での増加が大きな関与を果たしていた。また,男と比較して女の自殺死亡数の増加はわずかではあるが,女の近年の自殺死亡数の増加が関西および関東などの大都市部において明らかであった。
結論 関西および関東などの大都市部における自殺死亡数の相対的増加は,社会・経済的要因の関与を推察させるものである。近年の自殺死亡急増の背景にはこれまでとは異なる要因の強い関与があると考えられ,自殺死亡急増こついてのさらなる構造的解明が必要とされている。また,都市部での自殺死亡増加という新たな事態に対して,的確な自殺予防対策を確立し推進することが強く求められている。

キーワード 自殺死亡,大都市,地域集積性,保健統計

 

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