メニュー

論文記事:若年性認知症の人とその家族の生活実態 201607-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

m header btn

一般財団法人 厚生労働統計協会

サイトポリシープライバシーポリシー

pmark     お問い合わせ

論文

論文

第63巻第7号 2016年7月

若年性認知症の人とその家族の生活実態

-愛知県における8年間の推移-
小長谷 陽子(コナガヤ ヨウコ)

目的 65歳未満で発症する若年性認知症は,高齢者の認知症と比べて社会的認知が不十分で,必要な支援が本人や家族に届いていない。国の支援施策が進められている中,平成26年度に愛知県における若年性認知症の人の生活実態調査を行い,18年度に行った結果と比較し,8年間の推移を検討した。

方法 愛知県内の介護保険施設,医療機関,障害者福祉施設に対し,2段階で調査を行った。1次調査で若年性認知症の有無を問い,「あり」と回答した施設に対して2次調査票を送付した。内容は,性別,年齢,発症年齢,診断名,合併症の有無,認知症の家族歴と既往歴の有無,認知症の程度,日常生活動作の状況,認知症の行動・心理症状の有無,要介護認定の有無と要介護度,障害者手帳取得の有無と種類,障害年金受給等の有無等である。

結果 2次調査で把握できた該当者数は平成18年度は624人,26年度は356人であった。性別では両年度において男性の割合が多く,年齢は,60~64歳が最も多かった。原因疾患では平成18年度には血管性認知症の割合が最も高く,26年度にはアルツハイマー病が最多であった。平成18年度には重度の人が最も多く,次いで中等度であり,26年度には軽症者が最も多く,重症者の割合は少なかった。平成18年度には,歩行,食事が自立している人の割合は約5割であり,排せつも自立が最も多かった。入浴と着脱衣では自立は3割以下であり,一部介助が最も多かった。平成26年度においてもほぼ同様であった。要介護認定者の割合は,平成18年度に比べ,26年度には,6.6ポイント増加していたが,有意差はなかった。要介護度は,平成18年度には要介護4が最も多く,次いで要介護3と要介護5であったが,26年度には要介護3が最も多く,次いで要介護5であった。障害者手帳取得者の割合は,平成18年度には33.5%で,26年度は40.4%と有意に増加し,精神障害者保健福祉手帳取得者の割合は2倍以上となり,身体障害者手帳取得者の割合とほぼ同程度であった。障害年金等の受給者の割合も,平成26年度は約1.8倍と有意な増加がみられた。

結論 若年性認知症に関する理解や支援は8年間に着実に進んできているが,まだ不十分である。医療機関,介護保険制度だけでなく,雇用,障害者福祉など様々な既存の制度の活用とそれらの間の密な連携が必要である。特に診断直後の支援は重要であり,必要な情報の提供と適切な助言,本人や家族の不安を軽減し,今後の生活の方向性を示し,本人と家族の生活を再構築する支援が求められる。

キーワード 若年性認知症,生活実態調査,愛知県,8年間の推移

 

論文