論文
第64巻第2号 2017年2月 大学生のメンタルヘルスの実態とその関連要因に関する疫学研究-九州大学EQUSITE Study-高柳 茂美(タカヤナギ シゲミ) 杉山 佳生(スギヤマ ヨシオ) 松下 智子(マツシタ トモコ)福盛 英明(フクモリ ヒデアキ) 眞崎 義憲(マサキ ヨシノリ) 一宮 厚(イチミヤ アツシ) 林 直亨(ハヤシ ナオユキ) 淵田 吉男(フチタ ヨシオ) 熊谷 秋三(クマガイ シュウゾウ) |
目的 大学生のメンタルへルス支援を志向したポピュレーションアプローチのための基礎資料収集を目的にして,大学新入生全員を対象とした調査を行い,抑うつ症状保有者の実態およびその関連要因を検討した。
方法 縦断研究モデルの初年度のベースライン調査のデータを横断的に解析した。平成22(2010)年度入学の大学1年生2,631名を対象に調査に関する説明を行い,同意が得られ,欠損を除いた2,038名(男子1,408名,女子630名)を対象として,入学年度の6月に食事内容,睡眠,抑うつ症状(CES-D),ストレス対処能力(SOC),QOL(WHO-QOL,QOSL)を質問紙によって調査した。身体活動量を活動量計によって計測した。CES-D得点を基準に抑うつ症状保有者を判定し,抑うつ症状有無がその他の変数に与える影響を解析した。
結果 抑うつ症状保有者の割合は,27.0%(551名)であった。抑うつ症状非保有者に比べ,抑うつ症状保有者は,WHO-QOLおよびSOCの得点が有意に低く,健康状態のよくない者,睡眠障害の疑いのある者が有意に多かった。抑うつ症状保有者は,「経済的不安がある」「大学に満足していない」の項目が有意に高かった。一方,抑うつ非保有者では,「大学の居心地がいい」「大学の友達とよく遊びに行く」「大学生活が充実している」「困ったときの相談できる友人がいる」と回答した者の割合が有意に多かった。
結論 これらの結果から,大学新入生の約25%が抑うつ症状を有しており,抑うつ症状の有無が生活習慣,ストレス対処能力,経済的不安および大学生活の自己評価に関連することが示唆された。大学入学後の時期に健康や生活習慣,大学生活の満足感を高めるような指導・介入を行うことが新入学生の抑うつ症状の予防につながる可能性が推察された。
キーワード 抑うつ,生活満足感,生活習慣,ポピュレーションアプローチ,一次予防