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論文記事:地域の物理的環境と移動に伴う歩行時間との関連 201706-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第64巻第6号 2017年6月

地域の物理的環境と移動に伴う歩行時間との関連

森 克美(モリ カツミ) 李 廷秀(リ チョンスウ) 浅見 泰司(アサミ ヤスシ)
樋野 公宏(ヒノ キミヒロ) 渡辺 悦子(ワタナベ エツコ)

目的 近年,居住地域の物理的環境が人々の日常生活における身体活動や歩行行動,移動手段の選択との関連要因として注目されるようになっている。健康日本21(第2次)でも運動しやすいまちづくり・環境整備が身体活動・運動分野の目標に採り入れられているものの,居住地域の物理的環境と身体活動や歩行行動などとの関連を検討した国内での研究は少ない。そこで本研究は,海外での研究で代表的な物理的環境要因の一つとされる密度と人々の日常生活における歩行行動との関連を調べることを目的とし,移動に伴う歩行時間に着目して密度との関連を検討した。

方法 全国130の市町村を対象とした,平成22年度全国都市交通特性調査の個票データから調査対象者の1日の移動行動に伴う歩行時間を求めた。また,居住する市町村の人口密度,および居住地が市街化区域内にあるかどうかを物理的環境要因としての密度の指標とした。まず密度と歩行時間との関連を把握するため,市町村の人口密度と平均歩行時間を市街化区域内,区域外で層別して散布図を描いた。次に1日の歩行時間を目的変数,密度および個人要因を説明変数とした一般線形混合モデルによるマルチレベル分析を実施して,密度と歩行時間との関連を定量的に評価し,個人要因による関連性の違いも検討した。

結果 市町村の密度と平均歩行時間は正の関連を示し,人口密度の大きい市町村ほど,また市街化区域内に居住している方が区域外に居住しているよりも,平均歩行時間が大きい傾向にあった。マルチレベル分析の結果でも人口密度の大きい市町村に居住する者ほど,また市街化区域内に居住する者は区域外に居住する者よりも,移動に伴う歩行時間の期待値は大きくなった。その関連の強さは個人属性によって異なっており,20~39歳の年齢層や職業を持っている者で密度との関連が強く,19歳以下や学生などの比較的若年者で密度との関連が弱い傾向にあった。

結論 移動に伴う歩行時間は,地域の物理的環境としての密度と関連し,密度の高い地域ほど移動に伴う歩行時間が大きいことが示された。密度は商業施設などの多さ,道路網や公共交通機関網の発達の程度,歩道の整備状況など,都市としての機能を総合的に表していると考えられるため,身体活動や歩行行動などとの関連の機序を明らかにするためには物理的環境要因として密度が持つ意味を具体化していく必要がある。

キーワード 物理的環境,密度,歩行,身体活動,全国都市交通特性調査