論文
第64巻第6号 2017年6月 運動施設利用者の運動実践状況,腹囲と食知識・感覚との関係松原 建史(マツバラ タケシ) 植木 真(ウエキ マコト) 前田 龍(マエダ トオル) |
目的 運動を実践しているにも関わらず,腹囲がメタボリックシンドローム(MetS)の診断基準に該当したまま改善しない者が大勢いる。この原因が摂取カロリーにあることは想像に難くなく,上記の者では食知識の不足や食感覚にズレが生じている可能性がある。そこで本研究では,研究Ⅰとして,公共運動施設利用者を対象に,腹囲と食知識・感覚との関係性について,研究Ⅱとして,運動実践状況を把握できるデータに絞り込んで,運動実践状況,腹囲と食知識・感覚との関係性について明らかにすることを目的とした。
方法 対象を,研究Ⅰでは公共運動施設を利用している男性284人と女性616人の計900人,研究Ⅱでは研究Ⅰの対象者のうち,運動の実践状況が把握できた男性139人と女性295名の計434人とした。腹囲測定は非伸縮性メジャーを用いた自己測定で行い,運動実践状況として,過去1年間における自転車エルゴメータとトレッドミルの運動時間から週当たり運動量を算出した。食知識・感覚の調査は,食品カロリーを伏せた寿司と焼き鳥屋メニューそれぞれ数十種類の中から,自分の好みの組み合わせと一番カロリーが低いと思う組み合わせを選択させ,寿司と焼き鳥屋の自分の好みの組み合わせの平均値を嗜好スコア,一番カロリーが低いと思う組み合わせの平均値を最低予想スコアとし,これと運動実践状況ならびに腹囲との関係性について分析した。
結果 研究Ⅰにおいて,腹囲がMetSに該当する者(MetS群)としない者(正常群)に群分けし,食知識・感覚を比較したところ,嗜好スコアは正常群の方が,最低予想スコアはMetS群の方が有意に高値を示した。研究Ⅱにおいて,最低予想スコアは,週当たり運動量と腹囲を基に群分けをした高運動量&MetS群が高運動量&正常群と低運動量&正常群よりも有意に高値を示し,低運動量&MetS群は二つの正常群と差を認めなかった。
結論 運動を実践しているにも関わらず,腹囲がMetS判定のまま改善していない者の原因として,カロリーが高い食品を好むことが影響しているのではなく,食品カロリーに対する知識不足か,感覚がズレていることが影響している可能性が示唆された。また,運動量が多い者で,この傾向が特に強いことが示唆されたことから,今後の支援では,運動量が多い者を中心に,食品カロリーの正しい知識を浸透させていくことが必要であると考えられた。
キーワード 運動実践者,メタボリックシンドローム,運動量,食品カロリー,横断的研究