論文
第65巻第2号 2018年2月 医療・福祉関係統計調査の現状と体系的整備に関する研究増田 雅暢(マスダ マサノブ) |
目的 本研究は,厚生労働省が実施している医療・福祉関係の基礎的な統計調査について,その現状を体系的に整理するとともに,行政担当者や地方自治体の関係者に対するヒアリング等を行うことにより,その課題を抽出し,今後の改善方策を提案することをねらいとした。研究対象としては,国民生活基礎調査や21世紀出生児縦断調査等の縦断調査,社会福祉施設等調査,医療施設調査,患者調査,社会医療診療行為別統計等,厚生労働省の旧統計情報部が所管している10本の統計調査を選択した。
方法 研究方法としては,学識経験者による委員会を組織し,定期的に意見交換を行う会議を開催したほか,委員の間で分担を決めて,各統計調査の現状と課題等を整理した。また,厚生労働省の統計調査の担当者に意見聴取を行ったほか,地方自治体へのヒアリングを行った。
結果・結論 10本の統計調査に関する現状と課題について,それぞれ個別に指摘した。例えば,国民生活基礎調査の課題として,回収率の低下とその対応策,行政記録の利用とその可能性,外国人の増加への対応,介護・医療に関する調査項目の追加等について言及した。10本の統計調査の現状と課題を踏まえた統計調査全体の今後の課題として,①予算上の制約に対応するために,統計調査の担当部局が,統計調査に関連する省内の関係部局と密接な連携を図り,関係部局の援護も受けながら予算確保に努める必要があることや,調査内容・項目の変更・追加等について,統計調査の担当部局がイニシアチブをとってもよいこと,②調査内容や調査結果の集計・公表方法について,統計調査に協力している地方自治体や統計調査のユーザーである研究者等の意見を反映する必要があること,③地域包括ケアシステムの構築や福祉人材の確保問題,在宅医療と介護の連携強化など,こうした新しい政策の流れや,オンライン調査やビッグデータの活用など,新たな調査方法に対応していく必要があることを指摘した。
キーワード 基幹統計,一般統計,縦断調査