論文
第65巻第4号 2018年4月 ホームヘルパーの自己成長感に関連する要因-個別ケアの実践度に焦点をあてて-広瀬 美千代(ヒロセ ミチヨ) |
目的 在宅介護においてホームヘルパーは,非常にストレスフルな状況にあるといえるが,ネガティブな状況下においても学びや成長を感じる等の肯定的な側面を見いだせているかといった価値的側面を探求することが求められる。本研究においては,ホームヘルパーの自己成長感に関する要因を適切なアセスメントと突発的な支援ができるという個別ケアに焦点をあてて検討することを目的とした。
方法 A県内の訪問介護事業所から無作為抽出した,600名を対象とする自記式郵送調査を行った。調査票の有効回収数は149通,有効回収率は24.8%となった。質問項目は「自己成長感」,性別,年齢,ヘルパー経験年数,仕事継続意識,および「新たな気づきと突発的支援」であった。統計分析においては「自己成長感」について,「新たな気づきと突発的支援」を潜在変数とする1因子モデルを設定し,確証的因子分析を行った。また,構造方程式モデルを用いて適合度と各変数間の関連性を確認した。
結果 欠損値のない131人のデータを用いて,「自己成長感」3項目および「新たな気づきと突発的支援」7項目による1因子モデルを設定し,構造方程式モデリングを用いて確証的因子分析を実施した結果,統計学的な水準を満たし,構成概念妥当性が支持された。また,「新たな気づきと突発的支援」が「自己成長感」を規定するとした因果関係モデルのデータに対する適合度は,χ2(df)=73.863(72),RMSEA=0.014,CFI=0.999と統計学的な許容水準を満たしていた。また,尺度のCronbachのα係数は,すべての因子において0.870以上を示した。さらにヘルパーの経験年数と「新たな気づきと突発的支援」,仕事継続意識と「自己成長感」の間には,有意な関連が確認された。
結論 本研究におけるホームヘルパーの「自己成長感」は,信頼性と構成概念妥当性が得られたことから尺度として使用可能であると判断した。また,「新たな気づきと突発的支援」は「自己成長感」と関連がみられた。本研究結果から,ヘルパーとしての経験を積み,様々な気づきを通じて突発的な対処能力が高まることで個別ケアが可能となると,学びや成長を自覚していく可能性があることが示唆された。今後の課題としては因果関係の明瞭さを高めるため,質問項目を吟味し,調査対象者を拡大して実施することが求められる。
キーワード ホームヘルパー,自己成長感,個別ケア,ヘルパー経験年数,仕事継続意識,構造方程式モデリング