論文
第65巻第4号 2018年4月 臨床研修制度導入以降における
石川 雅俊(イシカワ マサトシ) 福本 大悟(フクモト ダイゴ) |
目的 2004年4月に臨床研修制度が導入されて以降,地方の医師不足問題を顕在化させたという指摘がある。厚生労働省は,地域の医師確保の観点から,臨床研修募集定員の適正化や医学部入学定員における地域枠の増員などの対策を行っている。一方で,医師の総数は増加傾向にあり,地方においても一定程度,医師数が増加しているものと推察される。本研究の目的は,2004年度に卒後臨床研修制度が新たに導入されて以降,医師の地域偏在が変化したかについて,全二次医療圏の人口10万人あたり医師数(以下,人口あたり医師数)やその平等性の観点から定量的に検証することである。
方法 平成16年と平成26年の医師・歯科医師・薬剤師調査および人口動態統計の結果を用いて,平成28年4月1日時点の全二次医療圏における医師数や人口などを集計したうえで,人口あたり医師数やジニ係数の推移を検証した。
結果 医師数は,平成16年256,668人から平成26年296,812人と,40,144人(増加率15.6%)増加していた。また,人口あたり医師数は,平成16年198.6人から平成26年226.7人と,28.1人(増加率14.1%)増加していた。一方,人口あたり医師数のジニ係数は,平成16年0.211に対して平成26年0.212と,ほとんど変化していなかった。二次医療圏でみると,人口や人口密度が大きいほど,人口あたり医師数が多くなる傾向がみられた。経年的には,人口や人口密度が大きいほど人口あたり医師数の増加率が高くなる傾向がみられた。ジニ係数は,人口や人口密度がそれぞれ第3四分位を上回る群で減少傾向にあったのに対して,その他の群では増加傾向にあった。
結論 医師の地域偏在の解消にあたっては,各地域の実情を踏まえたより効果的な偏在対策の実施が求められている。
キーワード 医師の地域偏在,二次医療圏,ジニ係数