論文
第65巻第6号 2018年6月 健康寿命に影響を与える年齢階級別医療費および
中島 尚登(ナカジマ ヒサト) 矢野 耕也(ヤノ コウヤ) 加藤 里香(カトウ サトカ) |
目的 健康寿命の延伸に医療費と介護費が有効に費やされているかを検討した。
方法 2013年の健康寿命推定値,1人当たり市町村国民健康保険医療費(以下,国保)・後期高齢者医療制度医療費(以下,後期高齢)・介護費を用いて,⑴健康寿命と国保・後期高齢・介護費との相関関係,⑵健康寿命を目的変数,国保・後期・介護費を説明変数とした重回帰分析を行い,検討した。
結果 ⑴健康寿命と年齢階級別国保・後期高齢・介護費との相関関係の検討において,国保総計は男女①「日常生活に制限のない期間」・男③「健康であると自覚している期間」とは負,女②「日常生活に制限のある期間」④「健康であると自覚していない期間」とは正,後期高齢総計は男女①③とは負,男女②④とは正,介護費総計は男女①女③とは正,男女②④男⑤「日常生活動作が自立している期間」とは負の相関を示した。国保年齢別では男①は幼〜中年期,③は幼・少年と壮年〜前期高年期,⑤は幼年と青〜中年期で負,女①③は幼年と中・前期高年期で負,②④は中・前期高年期で正,後期高齢では女①男・女③は前・中後期高年期で負,男②男・女④女②は前・中後期高年期で正の相関を示した。介護費では男②は要支援2・要介護1〜3,④は要支援2,⑥「日常生活動作が自立していない期間」は要支援2・要介護1〜5,⑤は要介護3〜5,女⑥は要介護1〜2で負,男①は要介護1〜2,女①は要介護1〜3,女⑤は要介護1〜2で正の相関を示した。⑵健康年齢を目的変数,年齢階級別国保・後期高齢・介護費を説明変数とした重回帰分析においては,男①が目的変数では要介護1の回帰係数は正,15〜19歳・要介護5は負,男②では80〜84歳は正,要支援2は負,女①では65〜69歳・要介護1は正,70〜74歳・80〜84歳は負,女②では70〜74歳・80〜84歳は正,男③では0〜4歳・100歳〜は負,男④では10〜14歳・50〜54歳・70〜74歳・80〜84歳は正,20〜24歳・要支援2は負,女③では65〜69歳は正,10〜14歳・70〜74歳・75〜79歳は負,女④では70〜74歳・80〜84歳は正,20〜24歳は負,男⑤では0〜4歳は負,男⑥では要介護2は負,女⑤では要介護1は正,女⑥では要介護2は負であった。
結論 相関関係より①③の延伸に「低医療費・高介護費」,②④の延伸に「高医療費・低介護費」であった。そして重回帰分析より国保では男②⑥と女⑤⑥,後期高齢では男①⑤⑥と女⑤⑥,介護費では男③⑤と女②③④で医療費・介護費が有効に費やされていない結果であった。
キーワード 健康寿命,医療費,介護費,市町村国民健康保険,後期高齢者医療制度