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論文記事:就業動機と賃金の関係における男女間の差異 201807-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第65巻第7号 2018年7月

就業動機と賃金の関係における男女間の差異

-介護労働者を対象とした回帰分析-
加藤 善昌(カトウ ヨシマサ)

目的 介護現場は離職率が高い。離職率の解消策として第一に賃金の引き上げがあげられるが,それが離職率の抑制に貢献するかどうかは先行研究によって異なる。だが,職務に対する意欲の刺激は離職率の抑制に有効であると,多くの先行研究において共通して指摘されている。また,介護現場の特徴として,女性労働者が多いことがあげられる。これらを背景としたうえで,介護労働者の就業動機と賃金の相関関係,そして,それが男女間においてどのように異なるのかを明らかにすることが本研究の目的である。

方法 介護労働安定化センターによって収集された「介護労働実態調査」の平成25年度版の労働者の個票データを用いたうえで,最小二乗法によって回帰分析を行った。なお,推定においては,労働者全体を対象としたうえで推定し,さらに,男女ごとに労働者を分けた場合においても推定を行った。また,就業動機について,男女間において特定の差異が確認されるかどうかもt検定によって検証した。

結果 就業動機については,女性の方がやりがいやスキルを重視して就業先を選択することと,男性の方が社会貢献の可能性を考慮して就業先を選択することが確認された。そして,最小二乗法による推定の結果,組織の理念に共感した労働者は,他の労働者に比べて賃金が低いというDonated Labor Hypothesis(無償労働供給仮説)が確認された。さらに,これは女性において発生する現象であることも確認された。したがって,日本の女性の介護労働者において,組織の理念に共感しているために,他の労働者に比べて無償労働を行う傾向が強いというMotivated Agent(動機づけられた依頼者)が存在すると考えられる。

結論 賃金の引き上げが有効に作用する可能性もあるが,介護労働者の就業動機は多様であり,また,女性の方が無償労働を行う傾向が強いと考えられる。さらに,地域や法人形態によっても,労働者の行動が異なる可能性が強いと考えられる。これらを考慮したうえで適切な報酬形態を設定することが,今後のわが国の介護産業において重要であるだろう。

キーワード 介護労働者,賃金,就業動機,無償労働供給仮説,動機づけられた依頼者