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論文記事:薬害スモン患者の現状と課題,発症年齢による比較 201808-06 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第65巻第8号 2018年8月

薬害スモン患者の現状と課題,発症年齢による比較

小長谷 正明(コナガヤ マサアキ) 橋本 修二(ハシモト シュウジ) 田中 千枝子(タナカ チエコ)
久留 聡(クル サトシ) 藤木 直人(フジキ ナオト) 千田 圭二(チダ ケイジ)
亀井 聡(カメイ サトシ) 祖父江 元(ソブエ ゲン) 小西 哲郎(コニシ テツロウ)
坂井 研一(サカイ ケンイチ) 藤井 直樹(フジイ ナオキ) 

目的 1970年に,スモンは整腸剤キノホルムの薬害として確定した。スモンの後遺症,ADL,福祉介護状況,若年発症スモン患者の問題点などを明らかにする。

方法 2016年度全国スモン患者検診受診者620人(男女比174:446,80.3±8.7歳(平均年齢±標準偏差),平均罹病期間48.9±4.2年)を対象とし,発症年齢が20歳以下の若年発症群75人と,21歳以上の成年発症群645人の2群に分けて,臨床症状・障害程度や福祉状況について検討し,各群間で比較した。

結果 歩行障害は,歩行不能ないしは車イスは発症時には全体の59.1%,2016年度検診時現在では21.2%であり,歩行障害の強い割合は,発症時は若年発症群の方が,2016年度検診では成年発症群の方が有意に高かった。視力障害は,全盲あるいは高度障害は発症時に全体で25.2%,2016年度現在では8.6%で,いずれも若年発症群の方が視力障害の強い患者の割合が高かった。2016年度の異常知覚は,高度異常知覚は全体で20.8%であったが群間に有意差がなかった。合併症のうち,ADLに影響を及ぼす脳血管障害,心疾患,認知症は成年発症群に有意に高かったが,関節疾患,脊椎疾患,抑うつは群間に有意差はなかった。成年発症群は,ADL指標のBarthel Index低得点,1日の生活が屋内に限られている人,病院・施設への長期入院・入所者の割合が有意に高く,同居家族数,未婚の割合が有意に低かった。障害者手帳は全体の88.4%が取得しており,介護保険は成年発症者を中心に55.8%が認定を受けていた。主に家計を支える人は,若年発症群で配偶者と両親の割合が有意に高かった。主な介護者は両群とも配偶者の割合が44%前後だったが,若年発症群では両親や兄弟,成年発症群では子どもとその配偶者,介護専門職の割合が高かった。今後の介護についての不安は,全体の60.0%が訴え,各群間に差はなかった。自由記載では,介護者の高齢化,介護者の疲労や健康,身近に介護者がいないなどが多かった。

結論 スモンは,治療効果が乏しい重篤な障害が後遺症として残っている。恒久対策として医療費の全額負担など医療面での対応はなされてきているが,福祉・介護面での患者の不安や要望は少なくない。高齢化による家族の少人数化や独居患者の増加,社会体験や経済力が乏しく,未婚率の高い若年発症患者群の今後の療養支援が課題である。円滑な公的サービスの受給,就労支援など,適切な対応が必要である。

キーワード スモン,キノホルム,後遺症,福祉,介護,介護保険