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論文記事:在宅療養支援診療所の発展と医療費の伸び率との関連 201809-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第65巻第11号 2018年9月

在宅療養支援診療所の発展と医療費の伸び率との関連

伊藤 敦(イトウ アツシ)

目的 在宅医療は,医師が患者の居住地まで出向いて診療する医療形態であるが,昨今ではこの在宅医療を発展させることで医療費を抑制することが期待されている。そこで,2006年の診療報酬改定で新設された「在宅療養支援診療所」(以下,在支診)に注目し,「在支診」の増加率(以下,発展)と医療費の伸び率との関連について解明した。

方法 まず,在支診の統計が公開された2008年から最新の公開年である2014年までの6年間に着目して,国全体の「在支診」,「在支診」以外で在宅医療を提供する診療所(以下,在宅医療診療所)や病院(以下,在宅医療病院)の数と全医療費,入院医療費,外来医療費(以下,医療費3指標)の推移について概観した。次に,在宅医療施設と医療費の関係を明らかにするために,これらの指標を都道府県別に集計し,基本統計量(平均値,標準偏差)とスピアマンの相関行列を算出した。また,「在支診」の発展と医療費との関連を解明するために,医療費3指標を目的変数,在宅医療施設を説明変数とした重回帰分析を実施した。さらに,「在支診」の増加率が高い地域と低い地域に分類した上で,両地域の医療費および在宅医療費の伸び率の相違について分析した。

結果 第一に,この6年間で「在支診」が26%増加する他方で,全医療費が10.8%増加し,さらには全医療費に占める在宅医療費が41.9%と大幅に増加した。第二に,「在支診」は医療費3指標と正の相関が認められた。「全医療費」が0.60,「入院医療費」が0.53,「外来医療費」が0.43であった。第三に,重回帰分析を実施した結果,「在支診」の増加率が「医療費」の伸び率に正の影響を及ぼしていた。「在支診」は「全医療費」に対して正に有意で,自由度調整済み決定係数が0.372であった。第四に,「在支診」の増加率が高い地域と低い地域では,「全医療費」の伸び率に1.4倍,「入院医療費」の伸び率に1.5倍,「外来医療費」の伸び率に2.9倍の差があった。これらの分析結果より,この6年間で「在支診」が急増した地域ほど医療費が大幅に上昇していることが明らかになった。

結論 「在支診」の発展と医療費の伸び率には正の相関があり,「在支診」の増加率が高い地域ほど医療費の伸び率が大きい。それゆえ,「在支診」の発展が,医療費抑制に寄与するとはいえない。

キーワード 在宅療養支援診療所,在宅医療,医療費,伸び率,診療報酬