論文
第65巻第12号 2018年10月 自覚的ストレスは体重増加と関連するか-人間ドック受診者を対象とした検討-田尻 絵里(タジリ エリ) 吉村 英一(ヨシムラ エイイチ) |
目的 近年,日本人の約半数が悩みやストレスを抱えていることが報告されている。体重増加は様々な疾患の発症と関連することが報告されているが,日本人において自覚的ストレスが体重増加に影響を及ぼすかどうかは明らかになっていない。本研究は,日本人の人間ドック受診者を対象に自覚的ストレスが体重増加と関連するか明らかにすることを目的とした。
方法 対象者は,2013年および2016年の両方の人間ドック受診者の中で,脳卒中,心臓病,慢性腎臓病を有する者を除いた30~65歳の男女7,257名であった。自記式質問票を用いて,年齢,自覚的ストレス,食習慣(腹八分目,食べる速度,食事時間,朝食欠食,夕食時間,夕食後の間食),身体活動量,睡眠時間を評価した。また,13項目の食品群の摂取頻度を因子分析(最尤法,バリマックス回転)し,因子負荷が0.4以上であった5項目の食品群(果物,魚,大豆,牛乳,野菜)を健康食パターンと定義し,合計点から低得点,中得点,高得点に区分した。統計解析は,多重ロジスティック回帰分析を用いて従属変数に体重増加の有無(≧5㎏,<5㎏),独立変数にModel1は健康食パターン,自覚的ストレス,食習慣,身体活動,睡眠時間,Model2はさらに年齢,2013年の肥満(BMI≧25㎏/㎡)の有無を投入し分析した。さらに,一元配置の分散分析を用いて,自覚的ストレス別に体重変化量を比較した。
結果 体重増加≧5㎏と関連があった項目は,Model1は,男性で自覚的ストレス(オッズ比[95%信頼区間]:高ストレス;1.73[1.25-2.40]),食習慣(悪い;1.83[1.16-2.88]),睡眠時間(6時間以上7時間未満;1.40[1.03-1.89]),女性で健康食パターン(低摂取頻度;2.15[1.37-3.37],中摂取頻度;1.75[1.07-2.87]),自覚的ストレス(高ストレス;1.62[1.05-2.51])であった。さらにModel2は,男性で自覚的ストレス(高ストレス;1.64[1.18-2.77]),女性で健康食パターン(低摂取頻度;1.81[1.15-2.87]),自覚的ストレス(高ストレス;1.59[1.02-2.48])と関連が認められた。一元配置の分散分析の結果,男女とも粗分析および年齢やベースラインの肥満,健康食パターン,食習慣,身体活動量,睡眠時間を調整した推定周辺平均体重変化量の両方で自覚的ストレスが高い群は低い群と比較して有意に体重が増加していた。
結論 男女ともに自覚的ストレスが体重増加に関連している可能性が示唆された。今後,自覚的ストレスと体重増加との関連についてさらなる検討が必要である。
キーワード 自覚的ストレス,体重増加,生活習慣