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論文記事:自治体による市民後見人養成の現状と問題点 201810-06 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第65巻第12号 2018年10月

自治体による市民後見人養成の現状と問題点

-市民後見推進事業を実施した自治体に対する質問紙調査の結果から-
松下 啓子(マツシタ ケイコ) 黒田 研二(クロダ ケンジ)

目的 成年後見制度は判断力の不十分な人々の権利を擁護するための制度として重要な役割を果たしてきている。これまで親族後見人や専門職後見人が後見人を受任してきたが,急激な人口高齢化により認知症高齢者が増え,後見人不足が問題となっている。そこで新たな担い手として注目されているのが市民後見人である。本研究は市民後見人養成の実態を調査することにより,実際に活動している市民後見人の数や活動実態を明らかにし,現状における市民後見人養成が進まない要因を見いだすことを目的とした。

方法 2011年度から行われた市民後見推進事業を1回以上実施した全国190カ所の自治体に質問紙調査を行った。配布と回収は郵送または電子メールで行った。期間は2017年1月から3月までである。103カ所の自治体から質問紙を回収し,回収率は54.2%であった。自由記載はKJ法を参考に分析を行った。

結果 市民後見推進機関を設置している自治体は74.8%であり,市民後見人の募集については自治体広報紙のほか,地元ラジオなど多様な方法で行われていることがわかった。また,家庭裁判所や専門職団体と半数以上の自治体が連絡を取っており,努力の様子がうかがえる。しかし,5年間に新たに活動を始めた市民後見人の数を人口10万人当たりに換算し,平均すると1つの自治体当たり3.2人で極めて少ないことが明らかとなった。自由記載を分析した結果,市民後見人の養成過程を6つにグループ化することができた。その中から①資源の不足,②マッチングの難しさ,③心理的なハードルの高さの3つの阻害要因を抽出した。

結論 現状の市民後見人養成の仕組みでは市民後見人を増やすことは困難である。人口の少ない過疎地では高齢者が多く,応募者が少ない。市民後見人の定義を再検討し,専門職をリタイアした市民等を含む範囲に広げていくことも必要である。せっかく,後見人養成研修を修了しても責任の重さによる心理的なハードルが高く,登録まで至らない人がかなりある。また,それを乗り越えて登録しても,市長申し立てに限るなどの制約があるために実際の受任に結びついていない。それらを改善するにはチームで活動し支援することにより市民個人の負担を軽減する必要がある。現状では法人後見人と連携して法人後見支援員として活動する方法や日常生活自立支援事業の生活支援員として活動する方法が考えられる。

キーワード 市民後見人,市民後見推進事業,法人後見人