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論文記事:世代効果を用いた地域格差指標の検討 201901-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第66巻第1号 2019年1月

世代効果を用いた地域格差指標の検討

-脳血管疾患・肺炎・自殺死亡-
三輪 のり子(ミワ ノリコ) 中村 隆(ナカムラ タカシ)

目的 世代(同時出生集団)の観点から地域格差を捉える新しい指標を提案し,健康施策の評価と今後の戦略の検討に資することを目的とした。健康日本21(第二次)では「健康格差の縮小の実現」が掲げられ,国民の健康に影響を及ぼす社会環境の改善に向けた取り組みが重視されている。その評価に際し,主要死因の死亡率の地域差は地域格差を表すものとみることができるが,これには人口の年齢・世代構成の違いによる影響も含まれている。世代によって取り組みによる影響の受け方は異なることが考えられ,世代の観点から地域格差を捉えることは高リスク戦略の1つにつながる。

方法 脳血管疾患,肺炎,自殺の死亡数(人口動態統計)と国勢調査人口に基づく47都道府県の性別死亡率(15~90歳)を,ベイズ型ポワソンAge-Period-Cohortモデルにより,総平均効果,年齢効果,時代効果,世代効果に分離した。これらのうち,世代効果に総平均効果を足して死亡率に戻した「世代死亡率」を用いて,全体(男女別47都道府県)と性別(47都道府県)でみたジニ係数を世代別(1861~1995年生まれ,5年区切り世代)に算出した。また,世代死亡率の高さで3分類した都道府県マップを作成した。

結果 脳血管疾患では,ジニ係数(全体)は1888年前後生まれから1923年前後生まれにかけて低くなったが,1928年前後生まれ以降,再び高くなっていた[0.16-0.20]。1886~1900年生まれ女性の地域格差が目立ち,福井の死亡率が高かった。1981~1995年生まれは,男女に共通して栃木・他2県の死亡率が高かった。肺炎では,ジニ係数(全体)は新しい世代ほど高くなる傾向がみられた[0.15-0.26]。1888年前後生まれと1971~1995年生まれ女性の地域格差が大きく,前者は青森・岩手・他5県,後者は青森・秋田・他5県で死亡率が高かった。自殺では,ジニ係数(全体)は1913年前後生まれを底にして,それ以降の世代で高くなり[0.14-0.31],地域格差に加えて,性別格差の拡大を認めた。1886~1895年生まれと1981~1995年生まれ女性の地域格差が大きく,前者は岩手・他7県,後者は秋田・他8都府県の死亡率が高かった。

結論 世代死亡率に基づくジニ係数では,各世代の地域格差の程度と世代間の差異,性別格差を捉えることができる。都道府県マップでは,都道府県レベルで各世代がもつリスクの程度を俯瞰できる。これら指標は,日本全体あるいは地域における取り組みの成果を地域格差の観点で評価し,高リスク戦略でターゲットとすべき世代や地域の把握,世代がもつリスク因子や背景因子の検討に活用できる可能性が示唆された。

キーワード 地域格差,死亡率,世代効果,ジニ係数,健康施策,高リスク戦略