論文
第66巻第2号 2019年2月 兵庫県の認知症カフェにおける
相原 洋子(アイハラ ヨウコ) 前田 潔(マエダ キヨシ) |
目的 認知症カフェを拠点にボランティアが,認知症の人を居宅訪問する取り組みが提案されるなど,認知症カフェにおけるボランティア活動の促進が提案されている。しかし認知症カフェでのボランティア活動の実態についてほとんど把握されていない。本研究では,ボランティアが活動する認知症カフェの特性と活動の課題を検証することを目的とした。
方法 2017年6月時点で把握された兵庫県の認知症カフェ全数を対象とした。調査期間は2017年6~8月とし,データ収集は構造化質問紙を用いた。ボランティアが活動している認知症カフェの特性を把握するため,ボランティア活動の有無をアウトカムとし,認知症カフェの基本情報,運営上の課題,地域特性を説明変数とし,χ2検定もしくはWilcoxonの順位和検定を用い分析を行った。また認知症カフェでボランティアが活動するうえでの課題について,自由記述を得て質的内容分析を行った。
結果 252の認知症カフェに調査票を郵送し,167の認知症カフェから回答を得た(回収率66.3%)。ボランティアが活動している認知症カフェは85カ所(50.9%)あった。ボランティアが活動している認知症カフェは,ボランティアがいないカフェと比べて1回あたりの認知症の人の参加人数が多く,また開設されている地域の総人口に占める認知症サポーター,キャラバンメイトの割合が高かった。認知症カフェでボランティアが活動するうえでの課題として,〈ボランティアのコーディネート〉〈ボランティアとしての資質〉〈ボランティアの人選・募集〉〈ボランティアの育成支援〉が抽出された。
結論 地域における認知症支援の拠点となり得る認知症カフェが,ボランティア活動の促進などその役割を発展するうえで,社会全体で認知症カフェの周知を高める工夫が重要である。またボランティアのコーディネートや人材育成など,すでに経験を持つ機関や認知症カフェが,そのノウハウを共有できる機会が重要であることが示唆された。