論文
第66巻第2号 2019年2月 学校欠席者情報収集システム(保育園サーベイランスを含む)
田邊 好美(タナベ ヨシミ) 栗田 順子(クリタ ジュンコ) 長洲 奈月(ナガス ナツキ) |
目的 茨城県では「学校欠席者情報収集システム(保育園サーベイランスを含む)」の導入により,2014年には0歳から18歳までの集団生活をする園児,児童・生徒らの感染症の発生状況がリアルタイムで把握できることとなった。本研究では,一保健所での取り組みとその結果を紹介する。
方法 水戸保健所では同システムを利用して,システムから自動的に検出される増加基準を超えた場合に,システム上で動向を把握した上で当該学校あるいは保育園等に電話し,状況や対応の確認を行った。調査対象期間は,2015年4月1日から同年12月31日までとした。アウトカムとしては,集団発生の有無とした。集団発生したとする判断する基準は社会福祉施設における報告基準を準用して1施設当たり10名以上とした。
結果 おおむね1クラス内3名程度の同一症状の欠席が発生した時点で電話連絡した。電話の内容は,状況や対応の確認でおおむね3分程度であった。この9カ月間に52回学校や保育園等に電話した。その内,49回(94.2%)で集団発生基準,つまり1施設で10名以上の欠席は認められなかった。
結論 94.2%で集団発生が発生しなかったため,この取り組みは効果的な感染症対策である可能性が高い。計2時間半を電話での指導に費やしたことになるが,一度施設で集団発生が生じ現地での指導となると,複数名が2時間半以上をかけて対応することになる。したがって,今回の電話での指導は明らかに保健所での業務を軽減した。また当然ながら患者数も激減しているため,公衆衛生の改善にも確実に寄与した。この取り組みにおいても状況や対応の確認のための指導は必要ないと考えられ,学校欠席者情報収集システム(保育園サーベイランスを含む)が運用されている地域では実施可能であると考えられた。今後は学校欠席者情報収集システム(保育園サーベイランスを含む)が全国の学校や保育園等で活用され,またその情報を今回の水戸保健所同様に保健所や行政,あるいは医師会が活用し,もって公衆衛生が大幅に向上することが期待される。
キーワード 学校欠席者情報収集システム(保育園サーベイランス),集団発生,予防,感染症,保健所