論文
第66巻第4号 2019年4月 日本における主観的健康指標と
佐川 和彦(サガワ カズヒコ) |
目的 OECDによる加盟国を対象とした調査研究によれば,日本は平均寿命ではトップでありながら,主観的な健康状態では最低ランクという状態であり,健康に関しては国際的にみて大きな矛盾を抱えた国ということになる。日本を対象として主観的健康指標と客観的健康指標との関係について分析を行う。
方法 分析には都道府県別データを使用し,HLM(階層線型モデル)の推定を行う。主観的健康指標が良好であるほど,客観的健康指標も良好になると仮定する。そのうえで,主観的健康指標の良好さが客観的健康指標の良好さにつながる度合いについて,地域ごとに格差が生じているかどうかを検証する。さらに,医療資源量がこのような格差を生じさせる要因となっているかどうかについても検証する。本研究において客観的健康指標として用いたのは,平均寿命である。また,主観的健康指標として用いたのは,自己報告による健康度である。これは,「国民生活基礎調査」のアンケートで「自覚症状なし・日常生活影響なし・通院なし」と回答した者の割合である。
結果 実証分析によって,自己報告による健康度が良好であるほど,平均寿命が長い傾向があることが確認された。また,自己報告による健康度の良好さが平均寿命の長さにつながる度合いには都道府県間で統計的に有意な差異が存在することが確認できた。人口10万人当たり一般病院病床数が多い都道府県では,自己報告による健康度に対応する係数が大きいこと,すなわち,自己報告による健康度の良好さが平均寿命の長さにつながる度合いがさらに高くなっていることが確認された。
結論 人口当たり病床数が多い地域ではそれ以外の地域と比べて,主観的健康指標と客観的健康指標との乖離(標準化した客観的健康指標-標準化した主観的健康指標)が大きくなっている可能性がある。
キーワード 主観的健康指標,客観的健康指標,人口当たり病床数,HLM(階層線型モデル)