論文
第66巻第5号 2019年5月 高齢者のセルフ・ネグレクト尺度開発に関する研究鄭 煕聖(チョン ヒソン) 孟 浚鎬(メン ジュンホ) |
目的 本研究は,高齢者がセルフ・ネグレクトに陥るリスクを正確に把握し効果的な介入方法と支援体制の確立に資することをねらいとして,在宅高齢者の自己記入式セルフ・ネグレクト測定尺度を開発することを目的とした。
方法 本研究では,韓国・ソウル市に居住し,老人総合福祉館と総合社会福祉館を利用する65歳以上の在宅高齢者を対象に,韓国語の無記名自記式質問紙調査を実施した。調査内容は,対象者の基本属性とセルフ・ネグレクトとし,セルフ・ネグレクト測定尺度は19項目で構成した3因子二次因子モデルを仮定した。分析に先立ち,韓国語の調査項目を日本語に訳した。統計解釈には,韓国の277名のデータを基礎に,そのモデルの構成概念妥当性を構造方程式モデリングによる確認的因子分析で検討した。また,高齢者の個人属性を独立変数とするMIMICモデルのデータへの適合度を検討した。
結果 因子構造モデルのデータへの適合度はCFIが0.921,RMSEAが0.065であり,統計学的に支持された。Cronbachのα信頼性係数は0.803で,許容範囲であった。なお,個人属性とセルフ・ネグレクトとの関連について,MIMICモデルの適合度はCFIが0.924,RMSEAが0.046であり,配偶者との同居状態(0.165,p<0.05)および月収(-0.216,p<0.01)に有意な関連性が認められた。
結論 セルフ・ネグレクトのリスク要因を早期に発見し,本尺度が潜在的リスクを有する高齢者への予防的介入に向けた方策を模索するための有効な手段となることを議論した。
キーワード 在宅高齢者,セルフ・ネグレクト,尺度開発,確認的因子分析,MIMICモデル