論文
第66巻第6号 2019年6月 島根県江津市の中山間地域に暮らす中高年者に対する
伊藤 智子(イトウ トモコ) 阿川 啓子(アガワ ケイコ) 加藤 真紀(カトウ マキ) |
目的 本研究の目的は,島根県江津市の中山間地域に暮らす人々のエンドオブライフに関する3年間の意識変化を明らかにし,市民の意志を大切にした地域包括エンドオブライフ・ケアの課題を検討することである。
方法 島根県江津市中山間地域において40歳から79歳までの市民800名に対し,平成23年,平成26年にエンドオブライフに関する郵送調査を行い,その変化を解析した。調査用紙は,厚生労働省の「終末期療養に関する調査」を参考に,独自の自記式質問紙を用いた。解析は性別と2群に分けた年代別(40~59歳群・60~79歳群)にて行った。
結果 3年間で60~79歳群において「死への不安や恐れ」を感じる人が有意に増加した。また,自宅死の可能条件は,男性群にて「自治体などの経済的支援」,女性群にて「カウンセラーの支援」が有意に増加した。60~79歳群で「死への不安や恐れ」を感じる人が有意に増加したのは,この3年間で江津市の中山間地域で暮らすことが十分な医療を受けることを難しくしていることの1つの表れと推察された。不治の病気になった場合の治療継続を希望する人の割合が有意に減少したことと,男性群にて「自治体などの経済的支援」,女性群にて「カウンセラーの支援」が有意に増加したことから,市民は尊厳死を望み,エンドオブライフ全般に対する困りごとに対する相談者を求めていることが推察された。
結論 江津市の中山間地域に暮らす中高年の地域包括エンドオブライフ・ケアを推進するためには,死を受容できる医療・福祉の確保,QOLを重視した個別サービスの充実,家族への介護費用支援,エンドオブライフを支える総合的ケアマネジメント力を有する人材育成が課題と考えられた。
キーワード エンドオブライフ・ケアニーズ,中高年者,中山間地域,3年間の変化