論文
第66巻第6号 2019年6月 医師・歯科医師・薬剤師調査を用いた専門医数の将来推計麻生 将太郎(アソウ ショウタロウ) 康永 秀生(ヤスナガ ヒデオ) 小池 創一(コイケ ソウイチ) |
目的 これまで日本の専門医数の将来推計を行った研究はない。専門医の適正配置のために各診療科の専門医数の将来推計を行った。
方法 2010年から2014年の医師・歯科医師・薬剤師調査の個票データに基づいて,Markovモデルを用いて,基本領域(精神科,臨床検査科を除く)の専門医数の将来推計を2038年まで行った。新人医師数が7,000人/年増加すると仮定し,男女比を7:3とした。定年退職する医師の男女比は実測値に基づき,年に応じて変化させた。専門医取得,維持,喪失のステータスの移行確率は,推計期間中一定とした。労働力を算出する際の重みづけは,60歳以上,あるいは女性は0.8,それ以外は1とした。
結果 256,885人の医師の背景は,男性77.9%,平均年齢40.9歳,診療所勤務28.9%,市中病院勤務50.8%,大学病院勤務20.3%であった。ほぼすべての診療科で専門医数は増加し,2014年と比較して,形成外科(1.66倍),救急科(1.58倍)で比較的大きく増加する。男性の専門医数はリハビリテーション科(0.68倍),外科(0.85倍)で減少する。女性の専門医数は全診療科で増加し,特に形成外科(3.27倍),泌尿器科(3.04倍)で比較的大きく増加する。2016年を1としたときの2038年における「女性の専門医数の増加比」はすべての診療科で1.5以上であり,特に泌尿器科(2.73),リハビリテーション科(2.72),外科(2.48)が大きい値となった。「労働力の増加率」もすべての診療科で1倍以上であり,特に形成外科(1.91倍),救急科(1.78倍)で大きい値となった。
結論 専門医数は全診療科で増加するものの,診療科によって大きなばらつきがある。女性の専門医数が増加するものの,専門医の労働力の減少にはつながらないことが示唆された。
キーワード 専門医,将来推計,Markovモデル,医師・歯科医師・薬剤師調査