論文
第66巻第15号 2019年12月 乳児用液体ミルクは母親の育児負担を軽減するか-韓国の母親に対する調査結果からみえた課題-水野 智美(ミズノ トモミ) 徳田 克己(トクダ カツミ) 趙 洪仲(チョウ ホンジュン) |
目的 韓国において,乳幼児を育てている母親が乳児用液体ミルク(以下,液体ミルク)をどのように利用しているのか,育児負担の軽減につながっているのかについて明らかにし,日本で液体ミルクを製造,販売する際に,どのようなことに留意しなければならないのかを明確化することを目的とした。
方法 韓国の麗水市内の幼稚園,保育所に子どもを通わせている母親453名に対する自記式の質問紙調査と韓国の麗水市内の保育所に子どもを通わせており,子どもに液体ミルクを飲ませた経験のある母親40名に対するヒアリング調査を行った。
結果 質問紙調査の結果,子どもが授乳期に液体ミルクを与えた経験のある人は約1割に過ぎなかった。また,与えていた人は,日常的に使用しているケースは少なく,外出時など使用場面が限定されていた。ヒアリング調査の結果,液体ミルクを子どもが飲まなかった,飲みたがらなかったケースがあった。その理由として,普段飲んでいる粉ミルクと液体ミルクの味が異なること,液体ミルクの温度が低いことが挙げられていた。液体ミルクを使用することによって,外出時にミルクを作る手間が減ったことが挙げられる一方で,デメリットとして値段の高さを挙げる人が多かった。また,液体ミルクが育児負担の軽減に効果があったと答えた人は20%のみであった。
結論 日本で液体ミルクを製造,販売する際に,値段,温度と味,賞味期限,販売形態について検討する必要性が考えられた。
キーワード 乳児用液体ミルク,育児負担,韓国,災害,人工乳