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論文記事:各市町村における病児対応型保育定員と一般保育所在所者数,小児科医師数,財政指標との関係 202004-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第67巻第4号 2020年4月

各市町村における病児対応型保育定員と一般保育所在所者数,
小児科医師数,財政指標との関係

江原 朗(エハラ アキラ)

目的 乳幼児は月に平均2回程度医療機関を受診しているが,軽微な急性疾患に罹患した子どもの登園を保育所は原則認めていない。病児対応型保育施設が整備されつつあるが,地方間の偏在が認められる。そこで,市町村の病児対応型保育定員の地方間格差を人口,医療資源,財政的な側面から説明する。

方法 重回帰分析(線形回帰)により,各市町村における病児対応型保育定員を,一般保育所在所者数,小児科医師数,実質単年度収支および市町村の所在する地方,市町村の人口規模のダミー変数により説明する回帰式を計算した。

結果 重回帰における調整済み決定係数(R2)は,0.684(P<0.001)であり,各市町村の病児対応型保育定員の68.4%を今回の解析で説明することができた。各市町村の病児対応型保育定員は,一般保育所在所者千人あたり1.806人,小児科医師数1人あたり0.071人,市町村の実質単年度収支10億円あたり0.735人増加した(ともにP<0.001)。また,関東地方の市町村に比べて,他の地方の市町村では保育定員が多く,その差の最高値は中国地方の2.656人であった(中部,中国,四国,九州・沖縄では差が0である確率はP<0.05)。一方,人口規模20~30万人の市町村に比べて,政令指定都市では定員が2.920人少なかった(P=0.020)。また,各説明変数の影響の大きさを比較するために,平均0標準偏差1にそろえた標準偏回帰係数を求めると,その絶対値は,(一般保育所在所者数)>(小児科医師数)>(実質単年度収支)>(地方による加算定数のうち正の最高値,中国地方)>(人口規模による加算定数のうち負の最低値,政令指定都市)の順であった。

結論 病児対応型保育定員の全国格差は,養育環境その他の地域性よりも市町村における一般保育所在所者数,小児科医師数や財政収支といった構造的な問題によるところが大きく,全国であまねく病児対応型保育を普及するには,病児保育事業を実施する主体を市町村から都道府県などの広い圏域に拡大することや財政の脆弱な市町村へのさらなる財政支援が必要であると思われた。

キーワード 病児保育,子育て支援,感染症,外来受療率,地方間格差

 

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