論文
第67巻第5号 2020年5月 医療計画におけるへき地医療に関する研究小池 創一(コイケ ソウイチ) 松本 正俊(マツモト マサトシ) 鈴木 達也(スズキ タツヤ)寺裏 寛之(テラウラ ヒロユキ) 前田 隆浩(マエダ タカヒロ) 井口 清太郎(イグチ セイタロウ) 春山 早苗(ハルヤマ サナエ) 小谷 和彦(コタニ カズヒコ) |
目的 第7次医療計画からへき地保健医療計画は医療計画へ統合された。この統合は,より効率的な計画策定や,国民にとってもより理解しやすい計画となることを期待してのものであったが,独立した計画がなくなることによって,へき地医療対策が埋没してしまう懸念も生じている。本研究の目的は,へき地保健医療計画の医療計画への統合の前後で,医療計画の記載内容がどのように変化しているかを評価することで,都道府県におけるへき地医療への取り組み状況の変化について明らかにすることにある。
方法 千葉県,神奈川県,大阪府を除く44都道府県の第6次および第7次医療計画に関し,5疾病・5事業および在宅医療に関する記載から,へき地医療についての記載ページ数・評価指標数ならびにこれらが5疾病・5事業および在宅医療についての記載ページ数・評価指標数に占める割合を算出した。また,今後のへき地医療の課題と考えられる項目について記載の有無を調査した。
結果 第6次医療計画のへき地医療関連の記載量は,平均7.8ページであったものが,第7次医療計画では,9.8ページとなっており,2.1ページ増加していた。一方,5疾病・5事業および在宅医療に占めるへき地医療に関する記載の割合は,7.5%から7.2%と減少した。同様に,評価指標数は,第6次保健医療計画で平均2.3項目,第7次医療計画で平均2.9項目と増加した。一方,評価指標に占める割合は5.5%から3.9%に減少した。医療計画内に記載されている内容については,へき地医療に従事する医療従事者の継続的確保や医療従事者の養成課程等におけるへき地医療への動機付けや,ICTによる診療支援体制やドクターヘリの活用等を評価指標とする都道府県が第6次計画時点に比較して大きく伸びているが,へき地医療拠点病院による巡回診療,医師派遣,代診医派遣の実施状況に関しては,第6次,第7次で大きな差はなかった。
結論 へき地保健医療計画が医療計画に統合され,記載の有無や分量という観点からは一定程度の充実が図られたが,より効率的で,医療を受ける側の国民にとってもより理解しやすい計画となっているかについてはさらなる検討が必要である。また,計画を実行し,事業の進捗状況を把握・評価し,必要な修正を加えるといったPDCAサイクルが実践されているかという観点からも引き続き検討が必要であることが明らかとなった。また,へき地や無医地区・準無医地区の定義についての議論も必要である。
キーワード へき地保健医療計画,医療計画,PDCA