論文
第67巻第8号 2020年8月 大阪府内市町村における大腸がん検診の個別受診勧奨の実態濱 秀聡(ハマ ヒトミ) 田淵 貴大(タブチ タカヒロ)中山 富雄(ナカヤマ トミオ) 宮代 勲(ミヤシロ イサオ) |
目的 大阪府のがん検診受診率は低い。受診率の向上を目的とした個別受診勧奨が推奨されているが,その実態はほとんどわかっていない。そこで,市町村が実施する大腸がん検診の個別受診勧奨の実態を把握し,勧奨方法とがん検診受診率との関連について検討した。
方法 大阪府が府内全43市町村に対して実施した2017年度の大腸がん検診における個別受診勧奨と検診受診率に関する調査データを分析した。各市町村の勧奨方法を対象年齢に応じて4群(40~69歳の年齢すべて・特定の年齢層・節目の年齢・その他)に分類し,個別受診勧奨の実態を把握した。さらに市町村における勧奨方法と受診率の関連について検討した。
結果 個別受診勧奨を実施していた市町村は39(90.7%)であった。そのうち「40~69歳の年齢すべて」に勧奨していた市町村数は4,「特定の年齢層」は7,「節目の年齢」は19,「その他」は9であり,節目の年齢に勧奨している市町村が多かった。個別受診勧奨実施の群では,受診率にバラツキがあるものの,未実施の群と比べて受診率は有意に高く,その差は8.0ポイントであった(p=0.017)。勧奨方法4群と未実施をあわせた5群間で受診率を比較した結果,40~69歳の年齢すべてに勧奨している群は,他の4群と比べて受診率が有意に高く,その差は10ポイント以上であった(特定の年齢層:p=0.028,節目の年齢:p=0.004,その他:p=0.032,未実施:p=0.001)。
結論 大阪府内の多くの市町村で,がん検診の個別受診勧奨が実施されていたが,対象者全員に対する勧奨は少なかった。対象者への勧奨ができるよう,国や都道府県による検診体制整備の支援が必要だと考えられた。
キーワード がん検診,個別受診勧奨,受診率,大腸がん,検診体制整備の支援