論文
第67巻第8号 2020年8月 男女別にみた都市旧ニュータウンに居住する
相原 洋子(アイハラ ヨウコ) 前田 潔(マエダ キヨシ) |
目的 高齢化が進展する都市旧ニュータウンに居住する高齢者を対象に,認知症になったときの居場所,支援に対する希望について,男女別に実態を把握することを目的とした。
方法 1960年代に住宅地開発が行われた兵庫県内最古のニュータウンの明舞地区に居住する65歳以上の人全員を対象に,半構造化質問紙を用いた横断調査を2019年5~9月に実施した。認知症になったときに住みたい場所として,自宅での暮らし,施設への入居など5つの項目から選択してもらい,また認知症・軽度認知障害(MCI)になったときに必要と思う支援として,構造化した5つの支援項目について必要の度合いならびに自由記述による回答を得た。調査協力の得られた2,269人(回収率22.4%)のうち,性別の記載がある2,252人を分析対象とし,居場所と支援希望をアウトカムとして単変量解析ならびに内容分析の手法を用い,男女で比較を行った。
結果 認知症となったときの居場所は,男性は「今の家に住み続けたい」の回答が4割と最も多く,女性は「施設・サービス付き高齢者住宅に入居」「今の家に住み続けたい」を希望する人が35%とほぼ同数であった。居宅生活を希望する人は,男女ともに家庭内介護者がいること,男性のみに持ち家(戸建)に住んでいる,近所付き合いをしている人に多い傾向が示された。認知症・MCI診断時の支援として,定量分析の結果は「日常生活支援」を希望する人が最も多かった。定性分析の結果は,想像できない・わからないといった「不明」に関する記述が全体ならびに男性に最も多く,女性高齢者は施設入所,在宅生活の継続といった「居場所」に関する内容が多く記述されていた。
結論 認知症時の居場所の希望として,男性は自宅,女性は施設を希望する傾向がみられた。また希望する支援においても女性は「居場所」に関する記載が多く,介護環境の性差がこのような結果につながったと考える。一方の男性は,支援を不明とする回答が多かった。認知症時の住まいや住まい方を本人が選択していけるように,住宅や介護サービスの情報提供,相談場所や介入方法など,性差に着目した認知症施策や制度の設計が求められる。
キーワード エイジング・イン・プレイス,支援,性差,ニュータウン,認知症,高齢者