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論文記事:農村に住む高齢女性の食料品の調達方法と病院・診療所への通院方法 202009-06 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第67巻第11号 2020年9月

農村に住む高齢女性の食料品の調達方法と
病院・診療所への通院方法

野邊 政雄(ノベ マサオ)

目的 多くの高齢者が地方の農山村に住み続けている。高齢者が農山村で暮らし続けるためには,食料品の調達および病院や診療所に通院する交通手段の確保が最低限必要である。本稿では,高齢女性がどのように食料品を調達したり,病院や診療所へ通院するための交通手段をどのように確保したりして,農村での暮らしを維持しているかを明らかにする。

方法 岡山県高梁市宇治町と松原町で2016-17年に高齢女性を対象に個別面接調査を実施した。65歳以上80歳未満の女性を全数調査した。有効票数は139票であった。食料品の調達および病院・診療所への通院の主要な方法を取った回答者の特徴をχ2検定もしくはフィッシャーの直接確率検定で明らかにした。

結果 ①食料品の調達方法について多かった調達方法は,「自分で自動車・バイクを運転して,買い物をした」(59.7%),「同居家族員が運転する自動車に乗って行った」(43.2%),「生協による自宅への配達」(36.7%)であった。②地域外の病院や診療所へ通院するための交通手段で多かったものは,「自分で自動車・バイクを運転して,通院した」(52.5%),「同居家族員が送迎」(39.6%),「バス・タクシーを利用」(19.4%)であった。③高齢女性が自分で自動車を運転できる場合,自ら自動車を運転して地域外で買い物をしていた。しかし,自分で自動車を運転できない場合,同居家族員がいれば,高齢女性は同居家族員に自動車を運転してもらって,地域外で買い物をしていた。移動販売や配達によって食料品を調達している高齢女性には,特定の特性が見られなかった。④高齢女性が自分で自動車を運転する場合,自ら自動車を運転して地域外の病院や診療所へ通院していた。しかし,自分で自動車を運転できない場合,同居家族員がいれば,同居家族員が高齢女性を送迎していた。自分で自動車を運転できず,同居家族員もいなければ,高齢女性はバスやタクシーを利用していた。

結論 ①半数以上の高齢女性は自分で自動車やバイクを運転して,買い物や通院をしていた。これは,68.3%の高齢女性が自動車やバイクを運転できたためである。多くの高齢女性が運転免許証を保有していたので,移動手段の確保は以前ほど深刻な問題ではなかった。②同居家族員は高齢女性の食料品調達や病院・診療所への通院で大きな役割を果たしていたのに対し,別居している近親者はあまり役立っていなかった。③近所の人が高齢女性の食料品の調達や病院・診療所への通院を支援することはあまりなかった。

キーワード 農村,高齢女性,食料品調達方法,通院方法,交通手段,相互扶助

 

 

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