論文
第67巻第12号 2020年10月 高校生ヤングケアラーの存在割合とケアの状況-埼玉県立高校の生徒を対象とした質問紙調査-濱島 淑恵(ハマシマ ヨシエ) 宮川 雅充(ミヤカワ マサミツ) 南 多恵子(ミナミ タエコ) |
目的 本研究は,2016年に実施した大阪府立高校10校の生徒を対象とした質問紙調査(以下,大阪府高校生調査)とほぼ同様の調査票を用い,子ども自身の認識に基づいたヤングケアラーの実態を把握することを目的として行った。
方法 2018年11月~2019年3月に,埼玉県の公立高校11校において,生徒を対象とした質問紙調査を実施した。調査対象の選定,調査票の配布・回収は高校に依頼した。11校の生徒4,550名が調査対象となった。
結果 4,260名に調査票を配布でき,4,252票の調査票が回収され,本研究の分析対象は3,917票となった。別居している家族も含め,家族にケアを必要としている人(以下,要ケア家族)がいるか否かを尋ねた結果,はいと回答した者が541名(13.8%)であり,そのうち241名(6.2%)は回答者自身がケアをしていると回答していた。障がいや疾病等はなく,幼いきょうだいがいるという理由のみでケアをしている者35名を除外し,残りの206名を対象とした。この206名がヤングケアラーと考えられ,存在割合は5.3%となった。また,負荷が大きいと考えられるヤングケアラーの存在割合は約1%となった。要ケア家族は祖母,母,祖父が多く,要ケア家族が祖母,祖父のみの場合,身体障がい・身体的機能の低下,認知症,病気が多く,母のみの場合,病気や精神疾患・精神障がい・精神的不安定が多かった。ケアの内容は,家事,感情面のサポート,力仕事が多かった。ケアの期間については中央値が3年11カ月であり,少なくとも半数が高校入学前からケアをしていた。ケアの頻度は毎日が最も多く,週4,5日と合わせて半数を超え,ケアの時間は学校がある日,学校がない日ともに1時間未満が最も多いが,2時間以上と回答した者が学校がある日では49名(23.8%),学校がない日では79名(38.3%)いた。ケアをしていることを家族以外の誰かに話したことがあるかを尋ねたところ,ないと回答した者が112名(54.4%)であった。話した相手は,友人が最も多く,次いで親戚,学校の先生であった。
結論 本研究では,高校におけるヤングケアラーの実態(ケアの状況,存在割合等)を示し,これらの結果は大阪府高校生調査と類似するものが多かった。ケアが長期化する者,負担が大きい者,孤立が懸念される者も確認され,教員,支援者による支援の必要性が示唆された。
キーワード ヤングケアラー,介護,手伝い,家族,高校生,質問紙調査