論文
第67巻第13号 2020年11月 乳児を持つ父親が幼少期に受けた愛情の実感と
藤田 芙美子(フジタ フミコ) 吉田 和樹(ヨシダ カズキ) |
目的 乳児を持つ父親自身が幼少期に受けた愛情の実感と現在の精神的健康度との関連,さらには,育児状況との関連を調べることを目的とした。
方法 福島市で2017年10月から2018年3月に4カ月児健康診査を受診予定だった乳児945人の家庭に対して,通常の問診票に父親対象のアンケートを同封して郵送し,健康診査時に回答を回収した。加えて,健診票と問診票からもデータを転記した。アンケート回収率は54.8%であり,父親509人のデータを分析対象とした。父親の精神的健康度は「お父さんの気持ちの状態はいかがですか」と質問して,3件法で回答を求め,「よい」とそれ以外(「なんともいえない」「いいえ」)に2区分した。受けた愛情の実感は,「あなた自身は子どものころから愛情を受けて育ったという実感がありますか」と質問して,4件法で回答を求め,「ある」とそれ以外(「なんとなくある」「あまりない」「ない」)で2区分した。
結果 受けた愛情の実感が「ある」以外の父親は214人(42.1%),気持ちの状態が「よい」以外の父親は125人(24.6%)だった。父親の仕事の量的負担,母親の気持ちの状態,人間関係の問題,そして出生順位を調整した多変量解析の結果から,受けた愛情の実感が「ある」以外の場合,気持ちの状態が「よい」以外の調整オッズ比は1.99(95%信頼区間=1.30-3.06)であった。さらに,父親自身が受けた愛情の実感と父親の児に対する愛着に有意な関連が認められた(怒り:p=0.016,低い愛情:p=0.028)。
結論 父親自身の幼少期の親との関係と現在の精神的健康度が関連し,さらには現在の育児状況にまでも関連するという愛着の世代間伝達と育児への影響が示唆された。悪循環を断ち切るためには,父親に対する早期の育児支援が必要である。
キーワード 乳児健康診査,産後うつ,愛情,精神的健康度,父性行動