論文
第67巻第15号 2020年12月 貧困世帯の子ども・若者への支援-支援者ミーティングと支援記録の実践への活用に関連して-三沢 徳枝(ミサワ トクエ) |
目的 困難を有する子ども・若者を支援する民間団体(以下,法人)では,支援者ミーティングが実施されず支援記録をつけない状況がある。本研究では,貧困世帯の子ども・若者支援に注力する法人を対象とする調査データを用いて,支援者ミーティングと支援記録と関係機関との協力・連携や教育訓練における活用との関連を明らかにすることを目的とした。
方法 「困難を有する子ども・若者の支援者調査,2011」(内閣府子ども若者・子育て施策総合推進室)から「ひきこもり」「発達障がい」等の支援を行う法人が回答したA調査票(447法人)を使用した。このうち貧困世帯の子ども・若者支援に注力する法人(122法人)の支援者ミーティングと支援記録の実施状況の二次分析でχ2検定あるいはFisher’s exact testを行った。
結果 貧困を経験した子ども・若者支援を行う法人の支援者ミーティングと支援記録の実施状況と協力・連携する機関や支援環境の整備,支援者の教育訓練の機会との関連が捉えられた。医療機関や特別支援学校,高等学校との協力・連携で,支援者ミーティングや支援記録が活用されている。地域活動へ参加する法人は,支援者ミーティングを支援者全員での実施が多く,ネットワークの構築をする法人はすべての対象者の支援記録をつける割合が多い。また教育訓練の機会について公的機関の研修・講演会への派遣を行う法人は,支援者ミーティングを全職員で行い,支援記録をすべての支援対象者につける割合が多いことがわかった。
結論 支援者ミーティングと支援記録は,貧困を経験した子ども・若者の支援をする法人が医療・福祉・教育機関と情報を共有し協力・連携するために,その活用について検討する必要がある。支援者ミーティングでは多様なメンバーを受け入れて,多様な地域の資源とつながることで,結果として子どもの社会に参画する力を育てることになる。また支援記録は支援の経緯を可視化して,多様な機関とのネットワークを構築するという点から,子ども・若者支援への介入に向けた活用方法を考える必要がある。支援者が公的機関の研修・講演会に参加して,子どもの多様なニーズに対応する知識とスキル,実践力を高め,様々な視点から実践の評価を可能にするために支援者ミーティングと支援記録が活用されると考えられた。
キーワード 子どもの貧困,ミーティング,支援記録,ネットワーク,情報共有