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論文記事:改正健康増進法の必要性 202101-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第68巻第1号 2021年1月

改正健康増進法の必要性

坂口 早苗(サカグチ サナエ) 坂口 武洋(サカグチ タケヒロ)

目的 近年,喫煙防止教育や活動の成果によって,喫煙率は確実に低下しているが,喫煙者のマナーは向上しているとはいえない。大学生の喫煙および受動喫煙に関する調査を実施し,実際にどのような迷惑が生じているかについて把握し,併せて健康増進法の改正がいかに必要であったかを示すことを目的とした。

方法 調査対象者は関東地方にある女子大学の学生1,274人のうち,年齢および喫煙経験の記載があった1,214人であり,調査時期は2008~2019年の毎年秋に,協力の得られた約100人ずつに対し,その場で質問紙およびデータ用紙に記入を依頼し回収した。調査項目は,自記式の質問紙調査,呼気中のCO量および手先の皮膚温度の測定である。

結果 調査対象者の喫煙未経験率は,91.9%であった。呼気中のCO量の平均値は2.0±2.2(±標準偏差)ppm,COHbの平均値は0.8±0.6%,手先の皮膚温度の平均値は30.9±2.5℃であった。タバコの有害性に関する認知度は「身体への有害性」「肺がん」「胎児への影響」および「子どもへの影響」が90%以上であった。一方,「中年太り」「女性の禁煙しにくさ」および「女性の易依存性」については50%以下であった。喫煙未経験者1,024人の呼気中のCO量は,5~6ppmが7.4%,7ppm以上が2.0%であった。直近の暴露場所はアルバイト先が26.7%,居間が24.2%,居酒屋および歩きタバコがそれぞれ8.2,8.1%であった。2018~2019年の対象者126人に追加質問した結果,三次喫煙の認知度は38.9%,「喫煙30分後まで呼気中に有害物質が排出」されることを知っている者は63.5%であった。受動喫煙により迷惑と感じた経験については,喫煙後の人がタバコ臭いと感じた者は96.8%,タバコの煙で食事がまずくなった経験を有する者は78.6%,自分の髪の毛や洋服がタバコ臭いと感じた者は69.8%であった。

結論 最初の1本を口にしないための喫煙防止対策はかなり充実してきているが,タバコが身近にない環境(受動喫煙防止,防煙)対策はいまだ進んでいないこと,分煙では受動喫煙防止に効果がないことが明白となった。改正健康増進法の遵守と同時に,飲食店従業員の健康を護る対策が引き続き求められる。

キーワード 改正健康増進法,呼気中CO量,受動喫煙,三次喫煙,受動喫煙防止条例

 

 

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