論文
第68巻第1号 2021年1月 現代日本における格差と貧困の所在地平原 幸輝(ヒラハラ ユウキ) |
目的 地域福祉の地域アセスメントにおけるニーズ調査として,どの地域において経済的な格差が大きく,貧困に直面している人々が多いのかという点を明らかにする。
方法 2018年の『住宅・土地統計調査』データから算出される所得関連指標を,2015年の『国勢調査』データから算出される社会経済指標によって説明するモデルを,相関分析と重回帰分析を通じて導く。そこで導かれた回帰モデルに基づき,『住宅・土地統計調査』にデータのある自治体(または政令指定都市の区。以下同じ)は実測値,データのない自治体は推定値を用いることで,日本全国の市区町村における所得関連指標を網羅する。そして,得られた所得関連指標の値をZ得点化した上で,極めて深刻な格差や貧困の問題に直面している自治体を明らかにする。
結果 各自治体における社会経済指標が所得関連指標に影響を与えていることが示される中で,経済的な格差の大きさを示すジニ係数には単独世帯比率が,貧困層の多さを示す年間収入200万円未満世帯比率には老年人口比率が,最も強い正の影響を与えていた。また,格差や貧困の状況が空間分布として示され,極めて深刻な格差や貧困の問題に直面している自治体も示された。特に,格差への対策が求められる自治体には都市部,貧困への対策が求められる自治体には離島地域,格差や貧困への対策が求められる自治体には町や村といった郡部の自治体が,それぞれ多く含まれていた。
結論 本研究を通じ,日本全国の市区町村における所得関連指標を網羅することが可能になり,格差や貧困に対する取り組みが必要となる自治体が明らかになった。そして,このマクロ的な統計分析によって,現代日本における格差と貧困の現状を把握することが可能となり,格差と貧困に関する地域アセスメントにおけるニーズの把握が実現された。
キーワード 福祉,地域福祉,地域アセスメント,格差,貧困,ジニ係数